後編 あの頃と変わらない初恋のこの人。
私が学校まで通う時に乗る15分間の各駅停車。
私には友達がいない。
中学までは数人の友達はいたのだが、
高校に入って高校デビューというものに失敗し、
未だに友達0人。
そんな学校での居場所がない私は、
この15分間だけ学校などの事をまったく考えず、
窓の外の景色を眺める。
私にとっては一番楽な時間だった。
そしてもう一つ。
私が乗る車両にいつも先に乗っている男の子の事だ。
話は数ヶ月前に戻り、
高校の入学式の日。
まだ時間が早いせいか、
電車の中には思ったほど混んでいなかった。
いろんな制服を着た新入生がちらほらといった感じ。
そして私は電車に乗り、
空いている席に座って、
向かいの席に目をやるとその男の子がいた。
眼鏡をかけてどっちかというと静かな感じの男の子。
その男の子が誰だか私は見た瞬間分かった。
私が5年生から6年生になる前の春休みに、
転校するまで通っていた小学校の同級生だ。
そして私の初恋の人。
「清水くんだ」
そう思わず声に出してしまいそうなほど驚いた。
もう4年ほど会っていない、好きだった人、
いや、今でも好きな人に会えるなんて。
全然変わってないな、清水くん。
私が清水くんを好きになったのは小学2年生の時。
クラスが同じで、
もう一年同じ学校に通っているというのに、
その当時の私は二年生になり、
初めて清水くんの事を知った。
当時から目が悪かったらしく、
眼鏡をいつもかけていて、
頻繁にレンズ汚れを気にして、
服で眼鏡を拭いていた。
私と清水くんは当時たまに喋るくらいの中で、
すごく仲がいいわけでも無かった。
好きになった理由はもう忘れてしまった。
一目惚れだったかもしれないし、
話しているうちに好きになったのかもしれない。
そんな清水くんとは2年生の時以降、
同じクラスになる事も無く、
こんな私に喋りかける勇気などなく、
3年が過ぎようとしていた、
5年生の終わり頃、
私の転校が決まった。
隣町の学校だ。
そして私は最後にと意を決して清水くんに、
告白をする事にした。
面と向かって言うべきだったのだけど、
その勇気は無くて、
でも手紙にすることは出来たから、
清水くんの下駄箱に、
その気持ちを綴った手紙を入れることにした。
しかし返事が返ってくることは無かった。
振られたのか、
何らかの形で無くなったりしてしまったのか、
それは分からなかった。
でも多分私は振られたのだと思う。
こんな事になるのなら、
面と向かって告白し、
面と向かって振られるべきだったと思う。
そっちの方が絶対にスッキリした。
そもそも告白自体するべきじゃなかったのかな、
そう私はいつも考えてしまう。
そして最後の最後まで返事が返ってこないまま、
私は転校した。
転校先の小学校ではそれなりに友達を作り、
結構楽しい小学校生活を送っていた。
人間の記憶とは間抜けなものでその頃には、
あれだけ好きだった清水くんの事も、
ほとんど忘れてしまっていた。
そして中学に入っても、
それなりに友達を作り、
結構楽しい中学校生活を送った。
何度か告白はされたが、
部活や勉強に専念し、
恋愛とは無縁の生活をしていた。
そして私は高校に入り、
今まで通りの学園生活を送ろうとしたのだが、
そこには小中学校の同級生はほとんどおらず、
自分から声をかける事もできず、
声をかけられる事を待ち続けていたら、
いつの間にか私は一人になっていた。
だからこの、
清水くんと一緒にいれるこの時間だけは、
本当に好きだった。
清水くんを見て、
昔の事を思い出したりしていると、
いつも時間が経ち、
清水くんが先に電車から降りて行く。
最近私は思う。
もう気づいてくれなくても、
喋りかけれないままでも、
私の事を忘れていたままでも、
清水くんと一緒にいれるのなら、
私はそれだけでこの時間だけは充分幸せさ。
でもできれば少しでいいから喋ってみたいな。
清水くんが私に気づいて、
私の名前を呼んで喋りかけてくれるのは、
もう少し先のお話。
初の連載前後編小説でした。
そしてちゃんとした女性目線も初めて。
どちらも圧倒的初心者のため、
できが悪ければ申し訳ありませんm(_ _)m
私が平日にいつも乗る、
15分間の各駅停車を舞台に書いてみました。
感想評価お待ちしております。
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