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遠目に映る各駅停車  作者: 膝野サラ
1/2

前編 あの子に似たこの子。

僕が学校まで通う時に乗る15分間各駅停車。


家や学校で居場所がない俺でも、

この時間だけはゆっくりできる。

だからこの15分間だけは本当に好きな時間だ。


そしてもう一つ。

電車が走り出し、

僕が乗った駅から学校の最寄り駅までは7駅。

その2駅目、約3分後に、

僕の乗る車両にいつも乗ってくる女の子。


僕はこの女の子が気になっている。

限りなく好きに近いほどに。


制服からして同じ学校ではない。

セーラー服を着たその女の子は、

前髪はまっすぐに切り揃えられている、

肩くらいまでの長さの黒髪ボブヘアー。


喋ったことなどもちろんない。

これから喋る予定ももちろんない。

顔しか知らないその子に僕は好意を抱いているのだ。


まつげが長く綺麗な大きな目。

小さくて丸い可愛らしい鼻。

綺麗で柔らかそうな唇。

スカートから覗く白くて細い足。

容姿だけではなく、

雰囲気など、全てが愛おしく見えた。

性格も何も知らないはずなのに。






僕が人生で好きになった女の子は、

この子で2人目。


昔、小学2年生の僕は、

ある女の子に好意を抱いた。

同じクラスの女の子だ。


僕は一目惚れに近い形でその女の子を好きになった。

綺麗な髪のショートカットで、

色白の可愛らしい女の子だ。


その子の名前は確か『神崎』といったかな。

下の名前はもう覚えていない。


学校では、

一軍の女子みたいに騒ぐわけでもなく、

二軍の女子のようにあまり喋らないわけでもなく、

誰とでも仲良くしていた子だった。


当時神崎さんと僕は、

特に仲が良いわけでもなく、悪いわけでもなく、

たまに喋るくらいの仲だった。


それから3年が経ち、

2年生の時以降、

神崎さんとは同じクラスになることもなく、

全然喋らなくなった。

というか喋れなくなった。


そして5年生から6年生になる前の春休み。

神崎さんが転校する事になった。


神崎さんの引っ越し先の隣町は、

今の僕には自転車で数十分ほどで行ける距離。

しかし当時の僕には行ったことのない、

すごく遠い場所に思えた。


そして当然のようにその想いを伝えることがないまま、

神崎さんは引っ越して行った。


それからしばらくは神崎さんの事を考える日はあったが、

中学生になる頃には神崎さんの事など、

完全に忘れていた。

記憶の端に僅かにあるくらいまでに。


それ以外の小学校での恋愛といえば、

5年生の終わり頃初めてラブレターを貰い、

初めて告白をされた事くらいかな。

しかし差出人は不明で結局誰か分からないまま。


それから中学生になった僕は、

好きな子ができないまま、

というか作る気もないまま、

中学二年の頃にある女の子に告白されて、

好きでもないのに付き合って、

三ヶ月と経たずに別れたり。

中学での恋愛はそれくらいだった。


そしてそのまま何もなく中学を卒業し、

賢くも馬鹿でもないくらいの高校に入った。

その高校は中学の同級生は数人いるが、

どれもほぼ喋ったことがない人ばかりで、

入学して約二ヶ月経つが友達もできないまま、

僕は居場所を見出せなくなっていた。


それから、学校のようにうるさくなく、

人も少ないこの各駅停車で過ごす15分だけは、

自分の好きな小説を読んだり、

携帯で自分の好きな音楽を聴いたり、

自分の世界に入り浸って、

ゆっくりとその15分間を無駄なく過ごせた。

そして更にこの女の子が現れたのだ。




そういえばこの女の子、

昔好きだった神崎さんに雰囲気が似てるんだな。

だから惹かれたのかもしれないな。


そう思っているといつも15分の時が経ち、

僕の学校の最寄り駅に着く。

そんな日々が続く。


このまま僕はこの女の子に一度も話しかける事もなく、

名前も知らないまま高校を卒業して、

会うこともなくなり、

いずれ忘れていってしまうのだろうな。

そう思うと少し切ない気分になった。

それだけさ。






その女の子が昔好きだった神崎さんだという事に、

僕が気づいて勇気を振り絞って話しかけるのは、

もう少し先のお話。

この小説は前後編です。

後編もご覧くださいm(_ _)m

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