肝試し
小学校のころ、団地に住んでいました。
団地では子供会の行事も多く、私もいろいろなものに参加しました。
夏のキャンプは阿蘇で行われていて、涼しかったことを思い出します。
そのキャンプで、ある年肝試しをすることになりました。私は幽霊とか宇宙人の類いは最も苦手で、肝試しなんてあり得ない話でした。
しかし、話はトントン拍子に進み、班分けをして六人一組になって行くことになりました。
最初に行ったグループは、「怖かったねぇ」と言いながらも笑顔が溢れており、そう怖くなかったのかな、と思って気を取り直しました。
私たちの番になり、私は六人の真ん中に挟んでもらって出発しました。怖かったけど、大人たちが脅かし役になっていることを知っていたため、いくぶんか楽になりました。
しかし、恐いものは恐い。
私は目をギュッと瞑り、前後の人に手を握ってもらって歩きました。
途中、脅かし役の大人が数人、藪から出てきて泣きそうになりながらゴール近くまで来ました。
すると、上級生が、「あれ、何だろう?」と言ったので、私も思わず目を開けてそちらを見てしまいました。
すると、暗い中でぼうっと光るなにかがありました。
懐中電灯の光かと思い、通りすぎようとした時、光るそれが発したであろう声を聞きました。「○○くん……○○くん……」とそれは呼び続けていました。
○○の部分は聞き取れませんでした。
無視してゴールにたどり着いた上級生が、最後の呼び掛けは怖かった、と大人に言うと、怪訝な顔をされましたが、それ以上のことはありませんでした。
やがて就寝時間となり、テントに入った私でしたが、トイレに行きたくなり、隣で寝ている子を起こしてトイレに行くことにしました。
大人は宴会をしていました。
大きな声で喋っていることから、酔っぱらっているのはわかりました。
その時、大人の一人が、「肝試しだけど、ラストに隠れていたのは誰だっけ?」
と言う話になっており、トイレから出てきた私たちには自然に聞こえる状況でした。
「最後に隠れとったのは俺ばい」
と言ったのは友達の家のお父さんでした。
でも、どう考えてもあの声の主は女性だったし、そもそもその友達のお父さんは、あの声の主より前に、バアッ!と出てきていたので、最後は……何を見てしまったのか。
怖くなった私たちはテントに戻ることが出来ず、宴会のほうへ行き、理由を話して大人たちのところへ居させてもらいました。
結局大人のテントで寝ました。
次の日、思いきって友人の数人に声の正体について聞きましたが、みんな聞かなかったし見なかったとのこと。
私の班だけがその声を聞いていたのです。
帰宅してからも忘れられず、しばらく姉の布団で一緒に寝てもらいましたが、今思い返してもあれはなんだったのだろう……。
謎です。




