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第三話

久しぶりの投稿!

神々のほうも書いているので、今回はこちらをどうぞ

午後6時55分。

オレは街にある、とある商業ビルの中にいた。

このビルの3階にオレの目的地がある。

階段を上って、3階にたどり着くとそこにはセキュリティーロックされた扉があった。

オレは鞄に入れてあるカードをかざし、暗証番号を入力した。

するとドアは自動で開き、オレは扉の中に入った。

中は普通の会社のオフィスみたいな場所で、机の数はざっと5つくらい。

その辺には紙の資料らしきものがたくさん積まれていた。

そしてその机に突っ伏している人が一人いた。

オレはそいつを


「おい、起きろ」


とかなり強めに頭を叩いた。

頭を叩かれたそいつは


「う~ん・・・」


と叩かれた頭と眠たいまぶたをこすりながら起きた。

数秒後、完全に覚醒したそいつはやっとオレへ非難した。


「えらく荒い起こし方だな、シン」

「オールを自分から引き受けておいて寝てるからだよ。

 はい、差し入れのコーヒー」


とここに来るまでの道中で買っておいた缶コーヒーをそいつに渡した。

そいつは受け取ったコーヒーを早速開けて飲んだ。


「ぷはーー、ちょっと目覚めたわ。

 サンキューなシン」

「どういたしまして。

 んで、オールお疲れさんだなジョー」


ジョナサン・キャンベル、愛称はジョー。

生粋のアメリカ人で金色短髪で碧眼。背は190cmでかなり体格がいい。

年齢は確か今年で27のはずだ。


「ほんとうに疲れたぜ、何回立候補したことを嘆いたか。」

「だからオレは止めたんだよ。なのに人の忠告をガン無視しやがって」

「悪かったよ、でもまあそのおかげで結構な数の書類が片付いたけどな」


とジョーは自分の机の上にある高く積み上がった書類の山を指差した。

オレはその書類を一つとって、


「これいつの書類だよ、どんだけためてたんだよ」

「しょうがないだろ、オレはデスクワークが大嫌いなんだよ」


その書類に書かれていた日付は数ヶ月前のものだった。

内容を見てみると、まあそこまで重要な内容でもなかったのでこれ以上言うのはやめにした。

・・・もっとも、この山のなかには重要な書類が紛れ込んでそうだが。


「で、今日は特にイベント無しか?」

「ああ、まあ小規模なのは何個かあったらしいが、オレたちの出るようなものじゃなかった」


そういいながらジョーはとあるリストをオレに見せた。

そのリストを見て


「確かに、オレたちはいらないなこれは」

「だろ?まあそれはそれで良いんだけどな」


そう、オレたちの仕事は少ないほうがいい。

ただ、そうも言ってられないのが今の世の中だ。

オレは自分のデスクに向かい、電子モニターの電源をつけた。

電子モニターというのは、PCの画面みたいなものだ。

あれよりも使い勝手がよく、また大きさも自由に変えることができる。

起動まで時間はかからず、すぐにホーム画面が開いた。

そこにはいろいろなアイコンがあり、オレはまずメールボックスを見た。

と、ジョーが


「お、今日はファンレター来てるのか?」

「うるさいぞ」


横からの茶々を気にせず、オレは中身を確認した。


「・・・・・・・・」

「うわ、これはいつもよりえげつないな」


新着は20通あった。

そのうち、ファンレターと呼ばれるものは19通あった。

そのどれもが何枚かの例外を除き、違う人から送られてきていた。


「・・・なんでだ」


そう疑問に思わざるを得ないのだが、ジョーは違った。


「そりゃそうなるだろ、あんなシチュでお前みたいなやつに助けられたら」

「そういうものなのか?」

「そういうものなんだよ」


あまり腑に落ちなかったが、これに時間を費やしているわけにもいかないので、とりあえずはそれらのメールは無視して、とある一通のメールを確認した。


件名:報酬

本文:今回のイベント完遂代です。

   振り込んでありますので後ほどご確認ください。


「ああ、あのイベントけりついたんだな」


今来たのは先日あったとあるイベントが無事終了したので報酬を受け取りくださいという、ゲーム風に言えばリザルト画面だ。

と言っても、最後のほうはあちら側に任せていたので、正直もらっていいのか迷ったが


「もらえるものはもらっとくか」


と自分に言い聞かせることにした。


そのあと、来ていたファンレターに返信した。

中には本当に返信しづらいものもあったが、それにはジョーにも少し手伝ってもらい、なんとかすべてのメールに返信することができた。

それが終わった頃には時計は19:55を示していた。


「悪かったなジョー、手伝わしちまって」

「いいってことよ、オレもちょっと気分転換したかったしな」


オレたちはオフィスみたいな場所の中にある休憩スペースで立ちながらコーヒーを飲んでいた。

ちなみに自分たちで淹れたものではなく、外の自動販売機で購入したものだ。


「ジョーはもう少しで上がりか?」

「ああ、9:00に上がるぜ。

 そういうお前は何時なんだ?」

「オレも9:00。

 今日は少し早めにしてもらってる」


その理由はもちろんアルディマインドだが、そういうことに疎いジョーは気づかなかったらしく


「そっか、んじゃ一緒に上がれるわけだ」

「それが?」

「いやー、最近一人で帰るからさびしくてよ、連れがいたほうがいいじゃんか」

「途中で分かれるけどな」

「それでもだっての」


ジョーは残っていたコーヒーを一気に飲み干し、


「んじゃ、あと1時間くらいはまじめに働きますか」


と言いながら自分のデスクに戻っていった。

オレはその姿を見ながら、残っていたコーヒーを飲み干し、


「オレももう少しがんばるか」


と気合を入れなおしてデスクに戻った。


集中すると時間が過ぎるのが早く感じる。

いつの間にか時刻は8:55になっていた。


「そろそろ帰る準備するか・・・」


そう言ってオレは電子モニターの電源を落とした。

ジョーのほうを見るとジョーも帰る準備をしていた。

オレは特に鞄から何も出していなかったのですぐに終わった。

鞄を持ち、先ほどやってきた夜勤の人に一礼し、先にオフィスの外に出た。

外に出るとあたりは暗く、街頭が街中を照らしていた。

オレは腕時計で時刻を確認すると、


「21:01か、もう開始してるな」


おそらく今頃ゲーマーたちはこぞってログインしている頃だろう。

そんなことを思っているとジョーがオフィスから出てきた。


「遅かったな」

「ああ、提出書類なんかをまとめ忘れててな。」

「なるほど」


とオレたちは夜の街を家へと向け歩き始めた。


「ああー、帰ったら絶対寝る」

「2日は休みだったか?」

「ああ、そうでもなきゃオールなんてやってられっかよ」


そんなことを話したり、


「そろそろ結婚とか考えないとだめじゃないのか?」

「お前に言われる筋合いはないっての」


こんなことを話していると、分かれ道に着いた。

ここでオレたちは分かれる。


「それじゃ、おつかれさま」

「ああ、また今度」


簡単な言葉を言ってオレたちはそれぞれの家路についた。

この分かれ道からオレの家まではそんなに距離はない。

かと言ってすぐに着くというわけでもないので、街灯が煌々と照らす住宅街の真っただ中の道を一人歩くことになる。

いつもは音楽でも聞きながら歩くのだが、今日は聞かずに他のことを考えることにした。

つまりアルディマインドのことだ。


(クロハもやるって言ってるし、少し早足で帰るか)


とそんなことを思いながらオレは少し急ぎめに帰ることにした。


数分後にオレは自分の家の前に立っていた。

オレの家は普通の住宅街にあるごくごく普通の一軒家だ。

親は現在出張していて、家にいるのはオレとクロハだけだ。

カバンから鍵を取出し、玄関にかざした。

現在は鍵も電子化されていて、一般住宅もこのようにかざすだけで開閉ができるようになった。

ガチャ…

そんな音を立てて玄関の鍵は解除された。

自動ドアなので解除されたのと同時に扉は開く。


「ただいま~」


とオレは声をかけて玄関に入った。

靴を脱ぎ、廊下を歩いて、リビングダイニングルームへと向かった。

と、


「おかえり、お兄ちゃん」


と、ダイニングから顔を出してオレの妹、クロハはそう言った。

クロハはエプロンを着ていて、どうやら食事を作っている最中のようだ。

オレの妹のクロハは中学3年生だ。

小柄で、黒髪を束ねずにながしている。

勉強は平凡なオレと違って、学年主席の実力を持ち、運動面でもこの前、武術総合の大会で優勝したはずだ。

さらには、親のいない家で家事全般をしてくれる、オレにはもったいなさすぎる妹だ。

そんな妹にオレはただいま、と言って自分の部屋に鞄を置きに行った。

制服を脱いで着替えを済ましてから再度、オレはリビングに向かった。


いつも夕食を食べているテーブルの上にはすでに夕食の準備が整っていた。

おそらくオレが着替えている間にしてくれたのだろう、まだ湯気が立ちのぼっていた。


「いつもありがとうな、クロハ」


と、自然に口から感謝の言葉が出ていた。

それを聞いたクロハは


「いきなりどうしたの、お兄ちゃん?」


と少し照れながら聞いてきた。


「なんか急に言いたくなっただけだよ」

「そんなこと言っても何も出ないよ?」


そんなことより早く座って、ご飯が冷めるよと言ってきたのでオレは席についた。

クロハも続いて座り、オレ達は手を合わせていただきますをしてご飯を食べ始めた。

今日の夕食は和食らしく、焼き魚に味噌汁、おひたしに卵焼きと食べ盛りの二人にしては少ないが、時間が時間なのでちょうどよかった。

いつもこの時間はお互いの学校での出来事を話したりしているのだが、今日は別の話題があった。


「クロハもアルディマインドをするんだよな?」

「うん、そうだよ」


クロハはあまりゲームをしない。

だが、今回アルディマインドが発表されたとき珍しく、


「やってみたい」


と言ってきたのだ。

別に止める理由も無かったので、妹の分のMEDも用意することにしたのだ。

いきなりやってみたいと言った理由を以前に聞いたことがあったが


「特に理由は無いよ」


とはぐらかされのだった。

それ以来聞いたことはないが、気になっていないかと言われればすごく気になる。


「でも、明日は学校だからほどほどだよ?」

「わかってるよ」

「ほんとかなー・・・」


まあいきなりVRMMOをしたいと言っても根が真面目なのでオレみたいにはならないだろう。

そんなことを話しているといつの間にかお皿のおかずは綺麗になくなっていた。


「ごちそうさまでした」

「はい、お粗末さまでした」


オレ達二人は手を合わせてごちそうさまをして一緒に片付けた。

昔、お互いの役割分担を決める時にご飯を作ってくれるのはほとんど妹なので片付けはやると言ったのだが、断られてしまった。

以来片付けは二人一緒にやると決めている。


「いくら早くやりたいからって雑にやるのはだめだよ?」

「わかってるよ」


と真面目な妹にお小言を言われながらもオレは丁寧に、それでいて速く片づけを済ませた。

…気のせいだと思うがクロハもいつもより少し急いでいる気がした。


10分ほどで片づけを終えたオレ達はお互いのMEDを持ってリビングのソファーに座っていた。

すでにMED内のストレージにアルディマインドはインストールしてあるので(と言っても起動に必要な少量のファイルだけだが)、あとはかぶって電源を入れたらVRの世界に行けるというわけだ。


「これをかぶるだけで仮想の世界に行けるってすごいよね・・・」

「まあな」


オレも初めて使ったときはクロハみたいに驚いし、怖くもあった。

クロハもきっと驚いている心のうちでは、未知のものへの恐怖もあるだろう。

だから


「お兄ちゃん?」

「これなら少しは平気かなと思ったんだけど」


妹の手を握ってやった。

小さいころのクロハは怖がりだったのでよくこうしてやったのだが


「…さすがに恥ずかしいか?」


不安になって聞いてみると、クロハは


「ううん、とても落ち着くよ」


と、笑ってそう言ってくれた。

これくらいしか兄としてやってやれることが無いので、少し嬉しかった。


「それじゃ行くか?」

「そうだね」


そうしてオレ達は一旦手をはなしてMEDを被った。

そしてもう一度手をつなぎなおして、MEDを起動するための言葉(MEDは音声認証で起動する)をクロハに教えた。

それを聞いたクロハはいよいよと思ったようで


「緊張するね」

「そうだな」


オレも初めてのゲームだということもあって少し緊張していた。

だけど、それ以上にオレは期待で胸を膨らませていた。

それはクロハも同じようで


「行こっか、お兄ちゃん?」

「そうだな、もう大勢の人が始めているだろうしな」


まずはクロハにいろいろと教えるところから始まるだろう。

けど、クロハは何でも器用にこなす。

きっとすぐにVRにも慣れるだろう。

そうなったら、マコトもまざってトップランカーを目指そう。

そんな楽しいことがたくさん待っている未来を思い描きながらオレ達は目を閉じて、起動ワードをつぶやいた。


「「Online:SynchroWorld!!」」


午後9:45分。

ここからオレ達の運命は大きく動き出したのだった。


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