黒魔術師の少年少女は
「もう、君も気付いているのだろう?」
「ボクら黒魔術師は永遠にこの牢から抜け出すことができないことを」
優秀、なおかつ最強と呼ばれた黒魔術師の彼女は語る。
「破壊を得意とした黒魔術師は、もうこの世界にはいらない。何故だか分かるよね?」
「……そう、正解だ。魔王がいなくなったからだ。」
彼女は指先を牢の柵に向ける。
強大な風魔法を放つ。
柵に触れる。消える。
「ならば、ボクらがこの牢の中にいる理由も分かるだろう?」
「ボクらはもう、王国にとって、ただの危険人物達でしかないんだよ。」
二人っきりの牢の中、彼女は静かに語り出した。
「魔王が存在していた三年前。ボクは天才と呼ばれていたんだよ」
「そして、天才と言われたボクは勇者達と共に魔王を倒した。」
「倒してしまった、そして、ボクは気付いたのさ。」
「もうボクは天才ではないし、天才にはなれない」
「君も、勿論ボクもだ」
「何故か分かるかい?……分かるはずがないか。」
「答えは複雑かもしれない。どんなに優れた能力を持っていてもそれを生かせないのならばそれは決して天才ではないんだよ。」
「あはは、そんなに悲しそうな顔をしないでくれよ」
「白魔術師と僧侶は援護、回復役だし、人間には害をなさない白魔法しか使えない。」
「戦士から武器を取ってしまっても怪力は残る。なら、それを生かして生きて行けばいい。」
「彼らは魔王がいなくても優れた能力を生かすことのできる天才だ。」
「この牢と同じように魔力を封じることができる素材を使いボクらの魔力を封じ込めればいいだって?」
「バカだなぁ、君は。この素材はとても加工を施すのが難しいんだよ?牢を作るので精一杯さ。魔法学校で習っただろう?」
「危険なのはやはり破壊魔法を得意とする黒魔術師だけなんだよ。」
「だから、ボクらは今ここにいる」
「まるで籠の中の鳥だ。いいや、もう鳥そのものか」
「ボクらは外に出られると信じて生きて行くしかない」
「最も、次外に出られるときはボクらが殺される時だろう」
「良い黒魔術師だけは出してくれてもいいのに、だって?」
「やはりキミは天性のバカだ。人はいつだって悪人になれるのさ。そんなことくらい分かるだろう?」
「ボクらはここで罪人のように生きていくしかないのさ。」
「罪を犯していない囚人さ。笑えるよね」
「もう、人間に絶望したよ。」
「もちろんボク自身にも絶望したさ」
「こんな時こそ、ボクらは何か方法を考えて、提案しなくてはいけなかった」
「でも、牢に閉じこめられることを知ったボクら黒魔術師は王に対して力をふるってしまったんだよ」
「かつての仲間さえもはや敵さ。」
「なんて愚かしい。なんて哀れなんだ。」
「王に逆らうなど、魔族と同類だ」
「彼らはそう言ってたのさ」
「共に平和を望んでいたはずなのに、おかしな話だよね」
「だからさ、ボクらは彼らとこの世界を憎んで死んで行くよ。」
「幸い、楽に死ぬ方法をボクは知っているのさ」
「再び王国に災渦が起きるだろうね」
「次の魔王はボクだよ。次の魔族は君達さ。」
彼らに再び絶望を撒き散らそう。