おっさんがTSして百合ハーレムを作るお話(嘘)
初のTSものです。よろしくお願いします。
柏葉聖一郎は先月40歳になったばかりのおっさんである。
大手貿易会社勤務して、高収入でイケメン。
ここまで揃えば女の方から寄ってきそうなものであるが、仕事一筋できたために未だに独身である。
そんな彼は、面倒見の良さも含めて体育会系の部下になつかれる程度に筋肉質な体型をしていたはずだった。
「どうしてこうなった」
聖一郎は、鏡の前に映るその少女の姿に疑問を投げかけた。
そこに写っていたのは、十代と思しき少女で、美人である。
つややかな長い黒髪、意志の強そうな大きな瞳、白い肌……こんな彼女がいたらなと夢想できる程度に美しい少女で、胸も大きい。
ただしその表情は、彼女の美貌を損なう程度に真っ青だった。
柏葉聖一郎、男、40歳。朝起きたら、美少女になっていました。
無断欠勤する訳にはいかないと会社へと向かう聖一郎。
入り口で警備員に止められることもなく、何故か自分の管轄部署に辿り着いた。
チラチラと降り注ぐ視線と、「……聖一郎さんが」「え?」などと会話する女性社員、男性社員。
もしや、自分の目には美少女に映っているが周りからは普通のおっさんにしか見えないのではないだろうか、そんな淡い期待を聖一郎は抱く。
そしてたどり着いて部屋のドアを開けていつものように、
「おはようございます!」
と、少し声が高い気がしたがきっと気のせいだろうと思いながら聖一郎は挨拶をした。
そこで、同じ管轄部署の女性社員である深春、23歳が、
「聖一郎部長、おはようございます。そして……やっぱり女の子になっちゃったんですね」
「やっぱり?」
その言葉に不思議そうな声になっていると聖一郎は自分でも思ったが、そこで深春がさらに頬を染めて、
「はい、ほら、昨日輸入した謎の金属の箱があるじゃないですか」
「あー、あの古ぼけた量産品の……」
「実は、あの箱を開けると、男は女に、女は男に性別が変わってしまうんです!」
聖一郎は深春の言っていることを頭の中で何度か考えて、
「……冗談、か?」
「いえ、本当なんです。だって聖一郎部長、どこからどう見ても完璧な女の子ですから」
「ああ、そうか、俺が見たのは見間違いではなかったと、そうか……と言うかなんで俺に開けさせた!」
「それは……聖一郎部長の事が好きだからです。本当に、何度部長が女の子であったらと思った事か……」
何か話が盛大にズレたような気がしたのだが、聖一郎は気にしないようにして、深春以外に視線を向けた。
そこにいたのは、よく懐いていた部下で筋肉質な肉体が自慢の京がいた。
彼に視線を合わせて聖一郎は、
「京、それでどうして女になるのが分かっていて俺に開けさせた」
「俺は反対したんです! でも、女の子になれば部長をお嫁さんにできるかもって唆されて……」
「待て、どうしてそうなった」
「いえ、部長みたいな面倒見が良い女性と結婚したいなって言ったら、じゃあ部長を女の子にしちゃえばいいじゃんて、深春とか里奈さん、陽子さんに……」
その三人の女性陣を冷たく見据える聖一郎だが、そこで深春が、
「部長、ずっと私、部長の事が好きだったんです。だから、私を受け入れていただけませんか?」
「いや、男の時にそれを言ってくれないと……」
「私、女の人しか愛せないです」
「……」
「だから私、部長が女になってくれてすごく嬉しいんです。大好き!」
もう何を言われているのか分からなくなりかけた聖一郎は、深春に抱きしめられた。
しかも美春は胸に顔を埋めて、
「ふふ、部長の胸、大きいですね。そうだ、ちょっとこっちに来てくれますか?」
「……」
呆然としたままの聖一郎はそのまま深春に給湯室に連れ込まれたのだった。
そこには深春以外に、里奈さん――深春と仲がいい―ー、陽子――聖一郎の上司の奥さん――、がいた。
そして、聖一郎がやってくるとともに、獲物がやってきたとでも言うかのような喜色の目で、
「可愛らしい女の子ですわ」
里奈が聖一郎を見て笑う。
「本当、これは美味しそううね」
陽子が舌なめずりをする。
「と言うか貴方は人妻でしょう! 子供もいるんでしょう! 陽子さん!」
「そう、私は子供も夫も大切。でも、中身も見た目も好みな貴方がいけないの。だからこんな風につまみ食いをされてしまうの。そうでしょう? 里奈さん、深春さん」
「そうですわね、くすくす」
「そうですよ、聖一郎部長、くすくす」
笑いながら、彼女達は給湯室の奥に、逃げ出そうとする聖一郎をひきづりこむ。
そして右側を里奈が、左側を深春が、正面が陽子で逃げ道を塞がれた挙句、両腕を左右の彼女たちに掴まれて逃げることすらできない。
その三人がにたぁと笑い、陽子が、
「女の子になる呪いなんて、本当にそんな物があるなんて信じられなかったけれど……でも、試して見てよかったわ」
「あ、あの、止めていただけませんか? 胸があたっているし……」
「あら、胸は貴方にだってあるでしょう? ほら……」
「あっ!」
指で服の上から軽くなぞられただけで、聖一郎は感じてしまう。と、そこで陽子が、
「あら、聖一郎さん、ブラジャーしていないのかしら」
「あ、当たり前だ!そんなもの独身男性の部屋にあるわけ無いだろう!」
「彼女に借りればいいのに」
「彼女なんていない!」
「……ふーん、でも、彼女なんて欲しくなくなるくらい気持ちよくさせてあげますわ、聖一郎部長?」
「や、やめ……あっ」
再び服の上から軽く胸を突かれて、聖一郎は小さく声を上げた。
それが嬌声のように聞こえて、聖一郎は顔を赤くする。
自分は男なのだ。
体だけが女なだけで、男なのだ。
けれどこれでは、本当に女になってしまっている気がして、聖一郎は怖くなる。
そこで、そんな自分の反応に戸惑っている聖一郎に陽子が、
「女の体は女である私達が一番良く知っていますわ。すぐに私達無しでいられなくして差し上げますわ」
「ま、待て、待つんだ」
「部長は欲張りですね、三人もの女性に求愛されて、何を拒むというのですか」
「ハーレムは男の夢なのでしょう?」
「若い子にこんなふうに求愛されて、聖一郎部長はうれしくないんですか?」
彼女たちの笑い声が響く。
だが聖一郎には、悪魔の笑い声にしか聞こえない。
逃げなければ、そう聖一郎が焦りを覚えた所で、
「聖一郎部長、大丈夫ですか?」
京が様子を見に来たのだった。
どうにか貞操を守られた聖一郎だが、
「た、助かった、ありがとう、京」
「いや、そうですね、はい」
「しかしいつまで俺はこんな女のままでいないといけないんだ」
「あー、2日で元に戻るそうです」
「……早く言えよ!」
「いや、言いそびれちゃって」
「くっ、だが、女になったら女に襲われるってどんな展開だ」
「彼女達、昔から部長のことを狙っていましかからね」
「そんな話は知らん」
「部長が女でも愛せると言っている女性社員、まだまだいますからね」
そこで京が、世間話のように恐ろしい話題を振って来た。
なんの冗談かと思って京を見る聖一郎に、京が。
「きっと部長なら大丈夫ですよ! 頑張ってください!」
そんな無責任な答えが返されて、聖一郎は顔を青くする。
俺はこの二日間、自分の貞操を女から守りきれるのかと考えて……周りを見回す。
ささっと顔を背ける女性社員に男性社員。
その頬がどこか赤いのは気のせいか。
そこで京がさらに加える。
「あと、女の姿や男の姿になると、魔性になって、男も女も悩殺するらしいので頑張ってください」
にこやかに告げる京にアッパーカットを喰らわせた聖一郎。
こうして女になった聖一郎争奪戦の火蓋が、切って落とされたのである。
{おわり}
ついかっとなって書いた。