序章 Another Real World
米国の軍事技術を転用したネットワークサービスが実用化してから二百余年。
そのテクノロジーは目まぐるしい進歩を重ね、当時の人々の生活に大きな影響を与えてきた。
中でも若者世代への影響力は凄まじく、ネットゲーム、とりわけMMORPGに傾倒してしまうようになってくる。
この情勢は2130年、VR空間の実現により、さらなる重大化をたどる。
若者のみならず、あらゆる世代の人々が仮想空間へ入り込むようになっていったのだ。
そんなVR空間を利用したMMORPGが世に出るのに、長い時間はかからなかった。
2132年に米国で初めてのVRMMORPGサービスが開始され、追従するように日本でも独自のサービスが運転された。
それは若者の就労意欲を削ぐことにも繋がり、しばらくの間就職氷河期ならぬ、雇用氷河期が続いた。また、ゲームをやり続けてしまう事で現実の生活が破綻してしまう者達も現れ始めた。
2138年、政府が対策としてネットゲームに税金をかけることでこれらの事態は収束を見たが、依然として利用者は後を断たなかったという。
それから12年経った2150年10月、月々のサービス利用料金に加え税金までとられるVRMMOに、またもや追い風となる事態が発生してしまう。
それは業界最大手のゲーム会社「ELECTOPRIME」が発表した一つの広告に端を発する。
『我が社が2151年1月より運営開始するVRMMORPG“Another Real World”にて、ゲームの最終目標をクリアしたプレイヤーの内先着10名に、永続ログインを認める準備がある。もちろん、対象のプレイヤーは利用料は免除され、健康と安全は我が社が全責任を以て管理する。残りの生涯を異世界で過ごしたいというプレイヤーを待つ』
現実を離れ、ゲームの世界で一生を過ごせるという文句に、現実生活に不安を抱える若者が飛びついた。
サービス開始当日からアカウント数は30万を超え、一週間後には100万人のプレイヤーがこの世界に入っていった。
それから1年後の2152年1月、この最終目標を達成し、異世界に残りの人生を委ねたプレイヤーは、わずか3人のみであった。
以前から書きたいと思っていたVRMMORPGものです。
定期的に投稿したいとは思っておりますが、忙しければ不定期になってしまうかもしれません。その点はご了承いただけると幸いです。