娘 深夜に。。。
実話に基づいたフィクションとでも言っておこうかな
娘が見たのは、
彼氏と抱き合う母親だった。
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夜中、
喉が渇いて戸を開けると、
彼と母親が服を着て、しかし抱き合っていた。
物騒な世の中だから、
続く無言電話に、壊れそうな鍵。
彼はウチに泊まるといった。
彼は、母親の彼氏だった。
どうしてよいのか分からず、
娘は発狂した・・・―――
涙が止まらなくなり、久々に大声で泣いた。
汚かった。親が、汚い。
わからなかった。
ただ全てがそれを拒絶した。
キスをしただけだという事実は、
娘には何故か重かった。
汚くて、汚くて、どうしても認められなくて、
娘はただ泣いた。
彼に嫌悪感はなかった。
それなのに。
翌日彼は予定通り帰っていった。
鍵は治した。
ドキドキした。
馬鹿みたいに泣いて
思い出しては泣いた。
母親の人生だ。
母親の出した結論だ。
自分に何ができよう?
ただ、その時、知った。
付き合うと言う事は、
ただ仲良くすることとは違うのだと言う事。
愛おしいという事。
娘にはないその感情の中に、
母親は身をおいているんだ。
彼女の決めた事だ、と娘は自分にいいきかせ、
認められぬ自分が悔しくてまた泣いた。
汚い、と勝手に嘆く自分に泣いた。
彼らが付き合うとき、
娘には拒否権もあった。
でもそれをしなかったのは、
――ただ、自分が無知すぎたのだ。
娘は自分を責めた。
付き合うと言う事に、
娘は抵抗感すら抱かず、
母親の決めた人生にわたしは関係ない、と思った。
娘は、今までと変わらぬ母親であってくれと、
ただそういった。
その言葉の重さに、気付いた。
母親に抱きしめられて、
娘は、嗚咽の中で言った。
自分は馬鹿だと。
何も知らないのだと。
どうして何も認められないのか、
全てが、分からないのだと。
彼女は、そんな事はない、と言って、ごめんね、と言った。
彼は、娘の頭を撫でながら、大丈夫だと繰り返した。
娘は泣きながら、そのまま眠ってしまった。
翌日、母親が言った。
きっと、それで正常なんだよ。
あなたが、汚いと思う事を隠さなくてもいい。
知りたくないなら、知らなくていい。
汚いと思う事は、悪いことじゃないからね。
将来、あなたが本当に大切に思う人と、この気持ちに気付きなさい。
こんな事に、予習はいらないんだから。
彼女は言った。
涙でぐしゃぐしゃになった娘は、
ただ、頷いた。
ここまで読んでくださってありがとうございました。