幸せに
広場に、朝の光が満ちていた。
ざわめきは、もうない。
あるのは——
静かに「聞こう」とする空気。
空は、一歩前に出た。
まだ背は低い。
声も、決して大きくない。
けれど——
誰も目を逸らさなかった。
「今日、ここで起きたことは」
空は、ゆっくりと言葉を選んだ。
「白髪の子が無実だった、それだけじゃない」
「もっと、大事なことだ」
民の顔を、一人ずつ見渡す。
「僕たちは、“言われた物語”じゃなく」
「自分で考えて、選ぶことができるってこと」
誰かが、
小さく頷く。
空は続けた。
「この領地では——」
「生まれや、髪の色や、過去の迷信で」
「人を裁かない」
一瞬の沈黙。
そして、はっきりと。
「恐怖で守られる国は、弱い」
「でも」
空は、穂の方を見た。
穂は、
少し緊張しながらも、
まっすぐ立っている。
「互いを見て、話して、守る場所は」
「強い」
空は、最後に宣言した。
「この領地は、“隠す場所”じゃない」
「生きる場所だ」
「間違えたら、直す」
「怖かったら、話す」
「誰かを犠牲にして守るやり方は、もう選ばない」
風が、旗を揺らした。
しばらくして——
一人の民が、声を出す。
「……領主様」
「この子は、ここにいていいんだな?」
空は、迷わず答えた。
「もちろん。」
「ここが、穂の家だ」
穂の目に、
涙がにじむ。
和子が、
そっと肩を抱いた。
民の中から、
今度はためらいなく声が上がる。
「……じゃあ」
「俺たちも、守る側になる」
「もう、石は投げない」
拍手はなかった。
歓声もなかった。
でも——
それでよかった。
宰相が、
静かに呟く。
「……国は、こうして変わるのかもしれんな」
空は、穂に手を差し出した。
「行こう」
「これからの場所へ」
穂は、
その手を、しっかり握った。
白髪は、
もう“不吉”じゃない。
ただ、
朝日に照らされる——
一人の子どもの色だった。




