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第9話 『二つの店』

コリアンドルに戻った智也を、いつもと違う光景が待っていた。

「まかない亭」の前に、長蛇の列ができているのだ。

「ご主人、大変だったよ!」

店番を任せていたケヴィンが飛び出してきた。

「王立魔法学院での晩餐会のうわさが広まってね。王都からもお客さんが来るようになったんだ」

店内を覗くと、見知らぬ顔ぶれが多い。

だが、常連の職人たちもいつもの席で、いつものように食事を楽しんでいる。

「申し訳ありません、お待たせして」

エプロンを締めながら、智也は考えていた。

店が大きくなることは嬉しい。

でも、今までのような雰囲気も大切にしたい。

その夜、閉店後の掃除をしていると、アリシアが訪ねてきた。

「青山さん、相談があります」

「はい?」

「実は、学院の敷地内に、小さな食堂を作ることになったんです。研究施設を兼ねた、特別な場所として」

「それは...」

「もちろん、『まかない亭』はそのままに。新しい食堂では、生徒たちの実習も兼ねて...」

智也は少し考え込んだ。

二つの店を任されるということは、大きな責任だ。

だが、それは同時に、新しい可能性でもある。

「分かりました。ただし、一つ条件があります」

「なんでしょう?」

「『まかない亭』の分店という形ではなく、生徒たちと一緒に作り上げる、新しい店にしたいんです」

アリシアは嬉しそうに頷いた。

「素晴らしいアイデアですね。では、名前は...」

「『星風亭』はいかがでしょうか。夜空の星のように輝く魔法と、故郷を想う風のように」

その夜、智也は新しいメニューを考えながら、改めて自分の歩む道を思った。

料理人として。

教師として。

そして、この異世界で生きる一人の人間として。

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