第5話 『王都の晩餐会』
アリシア教授の訪問から二週間後のこと。
豪華な封筒が届いた。
「謹啓
『まかない亭』料理長 青山智也様
この度、王立魔法学院の年次晩餐会における
料理の監修をお願いしたく、ご連絡させていただきました...」
差出人は、アリシア・フォン・ローゼンブルク。
「王立魔法学院...の晩餐会?」
智也は思わず手紙を読み返した。
王都最高峰の教育機関で、魔法研究の中心地である王立魔法学院。
その晩餐会とあれば、王国の要人も多数参加するはずだ。
「引き受けるべきでしょうか...」
迷う智也の元に、一通の魔法伝言が届いた。
アリシアからだ。
「青山さん、お手紙は届きましたでしょうか。
実は、私たちは『料理の魔法』の研究を本格的に始めようと考えています。
あなたの料理には確かな可能性を感じます。
どうか、力を貸していただけませんか」
その言葉に、智也は決意を固めた。
「お引き受けいたします」
返信を送ると、すぐに詳細な打ち合わせが始まった。
晩餐会まで、残り十日。
智也は、王都に向かう馬車の中で考えを巡らせていた。
異世界の食材と魔法の力。
そして、故郷の料理の技法。
その全てを組み合わせた特別なメニューを作り上げなければならない。