第30話 『新たな旅立ち』
魔狼は、残りの神器についても語った。
「『味見の杯』は東の海を渡った島々に」
「『炎翼の鍋』は南方の火山群に」
「『時告の匙』は西の時の迷宮に」
「それぞれが、ふさわしい継承者を待っている」
「しかし、急ぐ必要はない」
魔狼は付け加えた。
「まずは、その力を使いこなすことだ」
「そして、料理の新しい可能性を追求するのだ」
魔狼は、氷の城の一部を『まかない亭』と『星風亭』の料理人たちに開放すると言い出した。
「ここを研究の拠点として使うがいい」
「千年分の食材と知識がある。それを活かすのだ」
アリシアは、世界料理魔法研究会の新しい支部を、この城に設立することを提案。
「素晴らしい提案ですね」
大将も賛同する。
「世界中の料理人が集まり、研究と交流を深める場所に」
帰路の準備をする中、魔狼は智也とさくらを呼び止めた。
「最後に、一つ話がある」
「私の記憶にある味。それは、確かに日本の味だった」
「しかし、お前たちの作る料理には、それ以上のものがある」
「故郷を想う心と、新しい世界で生きる決意」
「その両方が調和した味」
「これからも、その道を極めていってほしい」
城を後にする時、振り返ると魔狼の姿が見えた。
千年の時を超えて、料理の可能性を守り続けた存在。
その背中は、もう孤独には見えなかった。
帰り道、一行は野営地で宴を開いた。
包丁の太刀と重箱の力を使い、
コリアンドルでは味わえない特別な料理の数々が作られる。
「不思議ですね」
さくらが語る。
「最初は不安だらけだった異世界での生活」
「でも今は、この世界でも自分の居場所が見つかった気がします」
智也も頷く。
「料理は、世界を繋ぐ」
「魔狼...いや、佐助さんの言葉の意味が、よく分かります」
宴は夜更けまで続いた。
それぞれが自分の夢を語り合う。
リリアたちは新しい魔法料理の可能性を、
エルフとドワーフの料理人たちは故郷での新しい展開を、
影喰らいは新たな研究の構想を。
そして夜空には、
まるで料理人たちの未来を祝福するかのように、
無数の星が輝いていた。




