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第28話 『美食の魔狼の城』

第二の試練を終えた一行の前に、巨大な氷の城が姿を現した。

「これが、美食の魔狼の居城...」

青く透き通った氷の壁は、まるで巨大な水晶のよう。

その中に、無数の食材が封じ込められているのが見える。

「主が認めた珠玉の食材たちよ」

白狼が説明する。

「千年の時を超えて保存された極上の素材。しかし、それを扱える料理人は稀有」

城の中に案内された一行を、荘厳な広間が迎えた。

そこには一匹の巨大な狼が佇んでいた。

漆黒の毛並みに金色の目。

その威厳ある姿は、まさに伝説の美食の魔狼だった。

「よく来たな、料理人たちよ」

低く響く声が広間に満ちる。

「最後の試練。この私の舌を唸らせる料理を」

「それができれば、包丁の太刀を与えよう」

魔狼の後ろの氷壁に、一振りの刀が浮かび上がった。

まさに伝説の神器、包丁の太刀。

「調理場へ案内しよう」

氷の城の奥には、夢のような調理場が用意されていた。

千年の時を越えた食材。

伝説の調理器具。

そして、完璧な調理環境。

「制限時間は明日の夜明けまで」

白狼が告げる。

「必要な食材は自由に使ってよい。ただし...」

「一度選んだ食材は変更できない」

「そして、失敗は許されない」

智也は深く息を吸った。

ここまでの試練で、仲間たちと積み重ねてきたものがある。

「皆さん、最後の戦いです」

一行はそれぞれの役割を確認し合う。

まず、食材選びから。

氷壁に封じられた食材を一つ一つ吟味していく。

「これは...」

エルフの料理人が目を見開く。

「天空樹の実」

伝説の食材で、口に入れた瞬間に空を飛ぶような感覚を味わえるという。

「こちらには竜の肝」

ドワーフの料理人も貴重な発見を。

強大な力を秘めた食材だ。

影喰らいは「月影茸」を見出した。

闇と光の力を併せ持つ神秘的な茸。

「あれを見てください」

さくらが氷壁の奥を指さす。

そこには、日本の食材が凍っていた。

米、昆布、鰹節...

「まさか、大将も...」

智也は先輩の足跡を感じた。

「よく気づいた」

大将が静かに頷く。

「20年前、私もここで料理を作らせてもらった。だが、魔狼の期待に応えることはできなかった」

智也は決意を固める。

和食の真髄と、異世界の魔法。

そして仲間たちの力。

全てを注ぎ込んだ一品を作り上げよう。


調理が始まった。

まず、出汁から。

千年物の昆布と鰹節に、月影茸のエキスを加える。

「この香り...」

影喰らいが目を見開く。

「懐かしさと新しさが...調和している」

エルフの料理人は天空樹の実を薄く削り、

風の魔法で旨味を引き出していく。

ドワーフの料理人は竜の肝を極小に刻み、

大地の力で熟成させる。

リリアたちは、数々の極上食材を最適の状態に調理。

アリシアは魔法で温度と湿度を完璧にコントロール。

そして智也は、全ての食材を和食の技法で統合していく。

「最後は...」

さくらが重箱を取り出す。

盛り付けが始まった。

重箱から放たれる光が、料理に宿る魔力と共鳴する。

「これは...」

アリシアが驚きの声を上げる。

料理から立ち昇る光が、氷壁に映り込む。

すると、氷の中の包丁の太刀が反応を示した。

光の渦が広間を包み込み、

そこに無数の景色が浮かび上がる。

故郷の風景、

異世界での出会い、

旅の記憶、

そして...料理人たちの想い。

「完成です」

智也が静かに告げた。

「一汁一菜 〜千年の記憶〜」

シンプルな一椀と一皿。

しかしその中に、無限の物語が詰め込まれている。

美食の魔狼が、ゆっくりと近づいてきた。

「この香り...」

金色の目が輝きを増す。

「まるで、時が重なり合うよう」

魔狼は慎重に料理を口にした。

その瞬間、広間全体が金色の光に包まれる。

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