第12話 『異世界料理コンクール』
「料理コンクール...ですか?」
アリシアから告げられた話に、智也は目を丸くした。
「ええ。王都で開催される『異世界料理大祭』の一環として行われるんです。各国の料理人が腕を競い合う、一大イベントですよ」
今年は特別に「魔法料理」部門が新設されるという。
「『星風亭』と『まかない亭』、両方からの出場枠がありますから」
智也は考え込んだ。
コンクールとなると、生徒たちにとっても良い経験になるはずだ。
「分かりました。参加させていただきます」
その日から、両店での特訓が始まった。
『星風亭』では、生徒たちが自分たちの得意分野を活かした新メニューの開発に取り組んだ。
リリアは「四季の星霜菓子」という新しいデザートの制作に挑戦。
春夏秋冬の移ろいを、魔法の力で表現しようと試みる。
ガルドは「大地の恵み麺」を考案。
大地の魔力を麺に編み込み、食べると大地の力が体に宿るという。
一方の『まかない亭』では、智也自身が新メニューの開発に没頭した。
「やはり...和食の真髄を伝えたい」
智也が行き着いたのは、「一汁三菜の魔法御膳」。
日本の伝統的な食事形式に、この世界の魔法を組み合わせる試みだ。
そんなある日、『まかない亭』に見慣れない客が訪れた。
「失礼します」
黒いローブに身を包んだ男性。
どことなく貴族の雰囲気を漂わせている。
「実は、私も料理コンクールの審査員なのです」
名乗ったのは、カイル・フォン・ヴァイスハルト。
王立美食研究所の所長だという。
「今日は、噂の『まかない亭』を訪れてみたくて」
智也は普段通りのメニューを提供することにした。
大会用の新メニューではなく、店の真髄である日常の料理を。
カイルは黙々と料理を口にしていく。
その表情からは何も読み取れない。
「素晴らしい」
最後の一品を終えると、カイルは静かに言った。
「料理に対する真摯な姿勢が伝わってきました。コンクールが楽しみです」




