第11話 『二つの光』
ついに『星風亭』の開店日を迎えた。
「緊張するなぁ...」
「大丈夫、練習は十分したもの」
「でも、お客様の反応は...」
生徒たちの緊張した様子に、智也は微笑みかけた。
「皆さん、聞いてください」
厨房に集まった生徒たちの前で、智也は話し始めた。
「料理には二つの光があります。一つは、目に見える光。魔法の輝きや、料理の見た目の美しさです」
生徒たちが真剣な面持ちで聞いている。
「もう一つは、目には見えない光。それは、料理を通じて伝わる想いです」
「想い...ですか?」
「ええ。作り手の真心、食べる人の笑顔、そこで生まれる絆。その全てが、目には見えない光となる」
「まかない亭での経験が、それを教えてくれました」
その時、入口の鐘が鳴った。
最初のお客様の到着だ。
「さあ、始めましょう」
開店初日は、予想以上の盛況だった。
評判を聞きつけた学院関係者はもちろん、一般の客も多く訪れた。
特に評判だったのは、生徒たちが考案した「星風御膳」。
リリアの「星屑のプリン」、ガルドの「月光煌めく翡翠麺」、ミリアムの「虹色ハーブソース」、そしてラムが選び抜いた新鮮な魔法食材を使った一品。
それぞれの個性が光る料理の数々に、客たちは目を輝かせた。
「素晴らしいわ」
「魔法学院らしい演出ね」
「でも、なにより味が本格的!」
夜の部が終わり、後片付けを終えた頃。
生徒たちは疲れた様子だが、満足げな表情を浮かべていた。
「先生、ありがとうございました」
リリアが深々と頭を下げる。
「いいえ、皆さんこそ、よく頑張りました」
その夜。
コリアンドルの「まかない亭」では、いつものように常連たちが食事を楽しんでいる。
「ご主人、王都の新店はどうだった?」
ケヴィンが尋ねる。
「ああ、うまくいったよ。でも、ここでの営業も大切にしていきたい」
「そうだな!ここは、俺たちの『まかない亭』だからな!」
二つの店。
異なる光を放つ二つの場所。
しかし、その根底にある想いは同じだった。
料理を通じて、人々の心を温かく照らすこと。
智也は、改めてそのことを胸に刻んだ。




