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青い君

青髪の、顔に今だ幼さを残す少年が卓につく。

猫のような瞳孔を持つ、ノイマンと思しき男が対面し、ヤグルマの街に新たにやって来る宗教についてその教会を立てる土地の利権などについて話し合った。


「なかなか、面白いじゃないか。お前、名前は?」


話がまとまり、終わりを迎えた時、ノイマンと思しき男はそういった。


「私は星匿教の代表として、現在中心となる教会で大司教をしております父親から、ジョン=アステールの名を受けました」


我々が「ダリル」の名で知るその少年は、自らをそう名乗った。 

 

――――――


 「太陽鷹(ホルス)を狩ったそうじゃないか。さすがAランク冒険者と言ったところか」

 

研究室でいつも通りにコーヒーの入った水筒を煽って先生がそう言う。

机の上のビーカーにはもう次のコーヒーが沸かしてある。

まとまった量を作り水筒で飲むのが彼女のコーヒーの飲み方だ。


「ええまあ……ほとんどニコラとダリルのお陰でしたけどね」

「それで、態々こんなところまでやってきて何用だ?夜枷なら断るぞ」

「誰が先生みたいな貧相もいいとこな女性と……」

「自分から振っておいて何だがこの話はよそう、君の率直な言葉は私には劇物過ぎる」


細っこい腕を前に突き出して彼女がレオンの言葉に待ったをかけた。


「そこ気にしてたんすね。俺が紳士ならもっと上手に返せたんでしょうが……」

「君にそれを期待した私が悪かった。本題に入ってくれ」

「あっはい。その太陽鷹と戦って初めて魔族の扱う二十面体魔法をこの目で見ました」

「そうか、アレはかなり派手な魔法で見応えがあっただろう?」

「ええそれはもう。その恐ろしさは身にしみてますから。で、その二十面体魔法なんですけど、先生の研究によれば人間がアレを使えるんですよね?」

「私の研究によるところと言うか実在するしな、二十面体魔法を扱う人間は。私はその原理を調べてるだけで。なんだ、そうなりたいのか?」


そう言うと彼女は立ち上がってビーカーのコーヒーを水筒に移し始めた。


「先生は話が早くて助かります。俺が二十面体魔法を扱うにはどうしたら良いですか?」

「多分お前には無理だぞ」


コーヒーを移し替える作業を淀める事無く簡単に彼女はそう言い放った。


「まじすか」

「うん」


――――――――

 

太陽鷹討伐に関する精算や、先のような学会での会話を終え、惑星の三人は町に帰ってから二日ほど開けてノストルを訪れた。


「御三方のお陰様で初めて犠牲無く今回の護衛を終えることができました感謝してもしきれません!」


対座のケェルが感銘を受けた様子でそう感謝する。


「まさか太陽鷹が出てくるとは思ってませんでしたが……皆さんを無事にここまで連れてくることができたので良かったです」

「申し訳ございません……緊急の通信でしたので上位魔族に足止めされて動けないということまでのみの連絡でしたから……今後はより具体的な連絡を寄越すように注意しておきますので」

「そうしておいたほうが良い。正確な情報は非常に重要だ。それの有無で事前準備の質が大きく変わる」


ニコラが毅然とそう伝える。


「重々承知しております……」

「ニコラさん言い方キツイですねぇ。すでに対策を講じることもわかってるんですから追い打ちで詰める必要も無いじゃないですかぁ」

「――すまない、私としてはただ補足したつもりだったが威圧感を与えてしまったようだな」

「年がら年中全相手に圧力かけまくってるので平常運転ですけどね!」


そう言ってゲラゲラと笑い出したダリルの脳天にニコラがチョップをいれる。


「それと、一つ質問をさせてくれ。何故、あのルートを見つけ……そして使うに至ったんだ?」

「えーっとそれはですね……スポンサーに教えてもらったからですね。北の国は領土の範囲内に厳戒態勢を敷いているのでなかなか亡命が難しいのはご存知ですよね」

「……まぁな」

「それで我々ノストルの一番始めの課題は亡命ルートの獲得でした。その時スポンサーさんからの提案であのルートを使うことになったんですよ。あそこはスポンサーさんの管轄するところなので北の国の兵も手が出せない為使わせてもらうことになりました」

「……なるほど、出資者の領地を通っていたんですね」

「サラッと言ったけどこれ大丈夫なのか?」

「……あっ……この件はご内密に」

「言いふらしたりはしないのでご安心を。そちらとの協力関係を無碍にするわけには行きませんし」

「話を戻すがあのルートは使わない方が良い。集団からはぐれたやつをノイマンのふりして襲ってる上位魔族が居る」

「それは本当ですか!?」

「ああ、あそこ通る度に少なくとも一人は死ぬんだろ?おそらく原因はそいつだ」

「そうだったのですか……しかし、我々はあのルート以外は持っていないのですよ」

「こっちとしても視察のような名目がない以上手を出しかねる」

「まあ……そうですよね」



そうして三人はギルドに戻り酒場で食事を摂ることにした。


「二人共お酒は飲まないでくださいよ、この後今後の方針についての話し合いをするんですから」

「わかってるって」


三人はそれぞれの食事を注文し、方策を決める為に話し合い始めた。


「さて、太陽鷹を倒したは良いものの正直いってまだ潜入に成功しただけです。ここからどうするかですが、僕たちには二つの道があります。ノストルの中枢を調べるのか、それとも出資者の方を調べるのか。ちなみに手分けは無しです、少なくとも出資者の方には上位魔族が絡んで来るので三人でことに当たりたいですね」


「最終的にはどっちも調べることになるんじゃないか?」

「そうとも限らん。私としては出資者の方を調べたほうが良いと考えるな。金の源流をたどる方へ向かえば取引のつながりも何かしらが見えてくる可能性がある。それだけの証拠を残してくれてるかは疑問だが」


「なるほど、一理あります。ケェルさんがボロを出してくれたのでそれを手がかりに追うこともできますしね。まあ、ノストルがやっていた場合結局出資者が取引歴を持っているはずが無いので結局ノストル自体を調べる必要はありますが。単純に自分の行きたいから適当にそれっぽい理由をでっち上げただけでしょう?」


「口からでまかせ言ってたのがバレたか」

「意外と分かるもんですよ」

「まあ取り敢えずあそこの森が誰が持ってる場所かだけ調べよう」


 三人は役所へと赴いて、件の森の所有者について調べたところ、ヴァン家と言う最近頭角を示しだした家のものだと分かった。


「案外あっさり終わったな」

「まあ役所からしたら冒険者の依頼の遂行に必要だと言われたら別に隠す理由も疑う理由も無いですし」

「それもそうだな」

「しかし、ヴァン家ですか……」

「なんだ、知ってるのか?」

「まあ、ヤグルマ(この街)に星匿教の教会を立てる際に、色んな家とお話したので少しばかり話をしたことがあります。この街でも比較的新参で――封建制度が終わった後からできた大きな家ですから、感性が新しくて話がしやすいと評判ですよ。私は旧貴族もそこまで酷い人たちだとは思いませんでしたけど」


三人は役所を出て、そのヴァン家の邸宅へと向かう。

ヤグルマの街から少し外れた、人通りの少ない郊外に佇む、しっかりとした作りのお屋敷だ。

そして、地図で見れば、太陽鷹と戦った森の直ぐ側だった。

門の横には「用があるものは玄関まで」との張り紙がある。

それを見た三人は開け放された門をくぐり、庭を通って玄関へと向かおうとした。

その途中ニコラが何かにピクリと反応した。


「……どうしたニコラ」

「この屋敷の中に『居る』」

「わかりました。最大限警戒しましょう」

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