二人目の赤ちゃん、その名は青藍。4
青藍が生まれて三日が経過しました。
三日前に誕生した赤ん坊は青藍と名付けられ、黒緋と私の二人目の子どもになりました。
新しい赤ん坊が生まれたとしても私たちの生活は変わりません。
今日の黒緋は奥の間で仕事をし、紫紺は手習いをし、萌黄は御所にあがって公家に挨拶回りをしています。私は土間で炊事をしたり、掃除をしたり、青藍のお世話をしたり。
青藍は元気に育っているわけですが。
「うえええええええん! ええええええん!」
「ああ、青藍。今度はなにがありましたか?」
私は小さな体でうずくまって泣いている青藍に慌てて駆け寄りました。
さっきまで渡殿を上機嫌でハイハイしていたのに、突然ぴたりっと止まったと思ったら、ふらふらとよろめいて泣きだしてしまったのです。
側に膝をつくと、小さな体がよろよろと私に縋ってきます。
「あう〜、あう〜、あいあ〜」
「いったいどうしました? なにかありましたか?」
抱っこすると泣きやんで、ちゅちゅちゅちゅっ、安心したように親指を指吸いします。
安心してくれたのはいいのですが、もしかして……。
「あなた、もしかしてハイハイに疲れたから泣いてるんですか?」
「あい〜。ちゅちゅちゅ」
「ああやっぱり……」
この子は生後三日でとっても上手にハイハイできるようになりましたが、疲れると泣いてしまうのです。
さっきも疲れてもう一歩もハイハイできないとばかりに泣き崩れていたというわけです。
私は青藍を抱っこしながら呆れたようなため息をついてしまう。
大きな産声とともに誕生した青藍は元気な子だと思っていましたが、元気は元気でもちょっと泣き虫な子でした……。
しかも庭園にいたカエルがぴょんっと跳ねただけでびっくりして泣いたり、犬が吠えただけで泣いたり……。ちょっと怖がりで甘えん坊だったのです。
「そんなに泣いて、困りましたね……」
「あう〜。うっ、うっ、うえええええん!」
「ほらほら泣いてはいけません。それでは強くなれませんよ?」
「あうあ〜。うえええええええん!」
「よしよし、泣いてはいけません。強い子は泣かないのです」
私は抱っこしながら小さな背中をなでなでしてあげます。
こうして青藍をあやしていると庭園に黒緋が出てきました。
今の時間は奥の間で仕事をしているはずなのに……。
黒緋は青藍の泣き声に気づいてこちらに歩いてきて、私はぐずった青藍を抱っこしながら居住まいを正します。
「すみません、泣き声がうるさかったですよね。お仕事の邪魔をしてしまいました」
「あう〜、あ〜、うえええええんっ」
「よしよし、どうしてあなたが泣くのです。泣いてはいけませんよ」
青藍を慌ててあやしました。
最近、京の都では結界を破壊されて魑魅魍魎が人を襲っているらしく、黒緋は離寛とともに対応で忙しくしていました。
黒緋は天帝ですが地上では陰陽師という仮の姿でいるため、実際に陰陽師の仕事もしているのです。
「気分転換に出てきただけだ。気にするな」
「しかし……」
「構わない。自分の息子の泣き声を不快に思う父親はいないだろう」
黒緋はそう言うと渡殿に腰を下ろしました。
側に来てくれて胸が高鳴ります。たったそれだけのことを意識する自分が少し恥ずかしい。
私は誤魔化すように話題を変えます。
「最近、お忙しいようですね」
「ああ。都の結界を破壊しているのは羅紗染だということまで突き止めたが、その目的が分からないんだ」
「そうでしたか」
「近々、京の都の結界を強化する。しばらく紫紺の鍛錬の相手が出来なくなるのが残念だが」
「きっと紫紺も残念がるでしょう。あの子は体を動かすのが好きな子ですから」
「ああ、鍛錬や手習いもよく頑張っている。充分な才覚だ」
「そうですね。頼もしいです」
紫紺が褒められて誇らしいです。
紫紺はあなたの望むような子に育ってくれているのですね。
黒緋は次に私が抱っこしている青藍を見ました。




