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フレー

無音で 白くて 無機質な部屋で 声を上げて

作者: 日浦海里

一面白塗りの壁

無機質で無常で

潔癖に見える清潔さに見えて

目と心を落ち着かせるために

緑と白の花

大きな花弁の内側には

花を支えるように

それとも花に捧げられるように?

山吹や黄土の色をした一本の雌しべが

伸びて頭をもたげている


誰かの泣いている声

幼子が「かまって」と声を上げる

何もない退屈な空間に

無機質な空間に

無機質なロボットのように

座って並ぶ人々


無色と静寂の空間の中にある

彩りと雑音


心を穏やかにするために

身体を少しでも休ませるために

不快にならないように

目に

耳に

負担をかけないように作られている中で

それを壊す声、色


でもそれでいい

そのままでいい


生きてるのだから


律することが出来ない間は

生きたいと声を上げていい


色も音も

受けるも

閉じるも


律することのできる側が

選べばいい



部屋の中

小さな個室で向かい合う


この人は何に困っているのか

向かい合う場所


目を

顔を

仕草を

目につく肌の部分を

声を

語られる言葉を


見て

聴いて

考えて

判断して

訪ねて

また判断して


それを一人一人に行っていく場所


どんなものか分からない

何を語るのか

どう語るのか


自らの命を危険に(さら)しながら

自らの生と死に触れながら

他人の生と死を握っている


心はきっと深い深い沼の底か

硬い硬い殻の中なのだ


無機質な


ロボットのような


考えるロボット

感じないロボット


そうでなければ

耐えられないのではないだろうか



心に触れる必要がある場合

どうすればいいのだろうか


心には心を

温もりのある言葉を


それはとても難しいのかもしれない

自らが壊れてしまうかもしれないから


一面白塗りの壁

無機質で無常で

潔癖に見える清潔さに見えて

目と心を落ち着かせるために

僅かな彩り

部屋の中には花は置けないから

代わりの何か


白い衣に身を包んだ人々は

何かに支えられながら

何かを捧げるように

一本の赤い、青い意思を持って

真っ直ぐ伸びて

頭をもたげることなく

こちらを見る


誰かの泣いている声


あぁ。

律することが出来るのだとしても

生きたいと声を上げていいのだ


色も音も

受けるも

閉じるも


律することのできる側が

選べばいい


生きたい、と

自らを賭して

命を救う

心を救う


その業務に従事される方々に

その業務を支援する方々に

その業務の環境を支える方々に

感謝します



---

蛇足ですが

私が何か重い病にかかったとか

そういうことではありません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読みながら何度も頷かされました。 とても重要な使命を負った仕事、その中には我々には計り知れないつらさと、そしてやりがいがあるのだと思います。 友人に医療関係者が多いのですが、大学受験の時にそ…
[良い点]  輪とするか凛とするかに【もたげる】の使い方。 [一言]  科によるも……  心も淀む身体の不調に集う部屋  せめて視界に入る物だけでもと  純白明瞭な清潔感に花を添えて  兎にも角にも困…
[良い点]  病院や病室、待合室のイメージが浮かんできます。    >律することが出来ない間は   生きたいと声を上げていい  >律することが出来るのだとしても   生きたいと声を上げていいのだ …
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