揺れる心
―――ピチチ
―――チュンチュンッ
翌朝。
―――ガチャッ
『あれ?』
「は?」
食堂に行こうと思って部屋を出たら、ばったりラルフに会った。今日はちゃんと起きたんだ……と思いつつ、私はその腕に目を向けた。
『……本当に寒いんだ』
昨日は半袖の上からイオリさんの羽織を着てたけど、今日のラルフは麻の長袖を着ていた。オウド国に入ってから買ったのかな?私は全然寒くないけど……
「なに?」
『あ、いや、寒さとか感じなさそうなのに』
「バカにしてる?」
『いやいやいや!!』
ヤバイ!発言には気を付けないと!昨日学習したばっかじゃん!!
ヒヤヒヤしながら歩きはじめるとラルフも並んで歩き出した。そういえば、ラルフと一緒に食堂に行くなんて初めだ。あ、なんか緊張してきた……。
『きっ、今日はちゃんと起きたんだねっ』
「まあね」
『……』
「……」
だめだー!話続かなーいっ!
まだ食堂まで十数メートルある。喋らなくてもいいんだけど、でも無言だととても長く感じるこの微妙な距離……
「もうすこしだね」
『え?』
ふいに発せられた言葉に、思わずラルフを見上げた。
「タナカが帰れるまで」
『え……』
急に胸が詰まった。ラルフは私を見ていない。……どうゆうつもりなんだろう。どうゆうつもりで言ってるんだろう。
「どうしたの?」
『!い、いや、あの……なんか……自分の住んでた所が懐かしくなってっ』
「そっか」
『うん』
胸がパンパンだ。なにかの拍子でパーンと破裂してしまいそうなくらい、ぎりぎりまで膨らんでる。
―――タンッ、タンッ……タン
しばらくすると食堂に着いた。イオリさんとユラさんが待っていた。私は二人に顔を見られないように、静かに椅子に座った。




