選択
真夜中。
―――サワッ……
―――サワサワッ……
アメリア国を出た五人は、砂漠を抜けて草原で二日目の夜を迎えた。明日、オウド国に入国する。
『zzz……ぐがっ……』
「……」
「……」
―――カサッ……
イオリとユラは頃合いを見て寝床を離れた。
―――サクッ、サクッ……
目と鼻の先にひょろりと立つ一本の木がある。なるべく音を立てないように二人はそこに向かった。
―――……サクッ
木の手前で足を止める。向こう側には、月明りに照らされた華奢な少年の後ろ姿があった。
「……ラルフ、どうした?」
―――スッ
金色の髪を揺らしてラルフが振り返る。
「いまなら帰れる」
―――……
「……お前は、帰らないのか」
「うん」
イオリが黙り込む。暫し沈黙した後、ユラが訊ねた。
「……ラルフ、タナカ殿はどうする」
「ああ、」
ラルフが苦笑する。ラルフは少し俯いたがやがて顔を上げ、真っ直ぐ二人を見て言った。
「つれて帰ってほしい」
はっきりとした口調だった。
「……お前と一緒じゃなくていいのか」
「うん」
「……本当にいいのかよ」
「うん」
イオリとユラは口を結んだ。
……歯痒い。自分たちはこの少年に対して何故こんなにも無力なのだろう。
―――グッ
拳を握りしめながら、ユラは再び口を開いた。
「……ラルフ、前にも言ったと思うが、俺もイオリも自ら望んでここにいる……誰かに言われたからではない……今は、自分の意思でここにいる。200年目のその時も、お前といたいと思っている」
―――サクッ
「そうゆうことだ。俺たちは帰らねえ、勝手にお前に付いて行く」
「……」
「タナカもな」
―――フッ
ラルフは俯いて首を掻いた。
「まいったなあ」
「……」
「……」
「ホント馬鹿だね、アンタたち」
微かに見えたその表情は……あの時と同じだった。




