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ライフ  作者: 道野ハル
アメリア国[後篇]
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秘密



 夜、バラック。


「タナカ殿、仕事の方はどうであったか?」


 ご飯を食べはじめると、正面に座るユラさんが訊ねてきた。


「なんで俺にはきかないの?」

「お前はどうせサボってたんだろ」

「起きてはいたよ」

『ほんと起きてただけったよね』


 お蔭で私はクタクタだ。まあ、でも確かに、起きててくれただけマシだった……かな?


「……なんか良いことあったのか?」

『え?』

「うむ、なんだか嬉しそうだ!」

『嬉し……?』


 え、そんな顔してる……?



“なんてカオしてんの”


“はやく掃除してよ、見ててあげるから”



 いやいやいや。嬉しくない嬉しくない。


 っていうか何て質問されたんだっけ?あ、仕事の様子を聞かれたのか。


『あ、あの、仕事は簡単でした。案内してくれた人が、すごく分かりやすく教えてくれて』

「ほう、アメリア軍の者が?」

『あー……なんか軍人さんっぽくなかったんですけど……ねえ、ラル』

「zzz……」


 ……フォークに肉刺したまま寝てるんですけど。


「どんな奴だったんだ?」


 寝ているラルフをスルーして、イオリさんがこちらを向いた。


『えっと、軍服じゃなくて、白い学ランみたいな上着を着てて』

「「……がくらん??」」

『あ、えっと……あの、首まである……詰め襟、でしたっけ?それに黒いズボンを履いてて丸眼鏡で、あと目が紫なんですよ!』

「紫?」


 ピクリとユラさんが反応する。


「?どうした」

「ああ……いや、最近ごく間近にその色の目を見たような……」

「『?』」

「まあよい。その者は工員なのか?」

『いや、技術者として雇われてるって』

「「!」」

『よく分からない人でした。でも悪い人じゃなさそうです』

「他になんか言ってたか?」

『え?えーと……』


 あと、なに言われたっけ?


『あ……なんか、同情?されました』

「は?」

『私とラルフの年齢聞いてきて、人生いろいろあるもんね、って』

「「……」」

『あ、あと』

「まだあんのか」

『はい。あ、でもこれは冗談で言っただけだど思うんですけど、“悪の組織の情報収集”してるって……』

「……」

「……」

『……』

「……謎だな」

『ですよね』


 会話が途切れる。


『あの、イオリさんとユラさんのお仕事は……』

「うむ!施設内とその周辺の巡回が主な任務であった!」

「お前、途中でうたた寝してたろ」

「暇だったのだ!」


 暇……。あ、でも、うたた寝するほど暇ってことは、ユラさんたちも、あんまり人に会わなかったのかな?


『あの……あの施設って、どうゆう人が働いてるんですかね?』

「……誰の姿も見なかったか?」

『はい。見たのは眼鏡の――ノベルさんと、廊下を歩いてる軍人さんくらいで、あとはどこの部屋も扉が閉まってて……色んな場所を掃除したけど、働いてる人には誰にも会いませんでした』

「……訳ありの者たちが、働いているのではないだろうか」

『え?』


 ユラさんが神妙な口調で言った。


「我々も、働いている者の姿は見なかった。しかし気配は確かにあった。タナカ殿は技術者に同情されたと言っていたな?同情されるような、訳ありの者たちが働く場所なのではないだろうか」

『訳ありの者……』

「姿を見せられねえ奴らってことか」

「うむ」

「やっぱり穏やかじゃねえな……」

「ああ、早めに引き上げたほうがよさそうだ。……タナカ殿も充分気を付けてくれ」

『は、はいっ!』



―――ちらっ



 窓の外を見る。


 私たちのすぐ近くで一体なにが行われてるんだろう……。知らなくても済む事かもしれないけど、知らないのも恐い気がした。



--------



 翌日。朝からものすごくビックリすることが起こった。


「あっ!!」

「あ」


 昨日と同じく、中庭でイオリさんとユラさんと別れようとした時、向こうからノベルさんが歩いてきた。ノベルさんを見た瞬間、ユラさんが声を上げた。


「おぬっ、おぬっ、おぬしっ……!!」

「団子の人?」

「「『団子?』」」


 団子ってなに?


「武器商にんんんんっ!!」

「「『!』」」


 武器商人って……ユラさんが煙玉を買ったっていう!?


「なななぜお主がこんなところに!?というか煙玉ちょっと高くないか!?」

「たまたま街に出てただけで、こっちが本業です。え、でも優れものでしょ?あれ」


 天パるユラさんと比べて、ノベルさんは非常に落ち着いている。


「ちょっと待て。……お前は、街に出られるのか?」


 イオリさんの鋭い瞳がノベルさんを捉える。ノベルさんはイオリさんを見ると、僅かに口角を上げた。


「……まあね。でも一応、内緒にしといてください」

「……」

「ところで、」


 紫の瞳が私たちを見回す。


「貴方たちは、どうしてここに来たの?」

「「『!』」」

「って、そんな簡単に言わないか」



―――カッ、カッ、カッ



 遠くから、誰かが近付いてくる音が聞こえた。


「おっと」


 ノベルさんは大袈裟に眉を上げると、私たちに背中を向けた。


「お達者で!」

「「『……』」」

 

 明るい声でそう言うと、軽快な足取りで何処かへ去って行った。




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