表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライフ  作者: 道野ハル
アメリア国[後篇]
76/162

本音



「はい、今日はここまでー!」


 青年の掛け声に手を止めて、机の上を片付ける。



―――ガタ


―――ガタガタッ



 片付け終わった者から各々部屋の出口に向かう。


 ここにきて二日目になるが相変わらず説明はない。この部屋で朝から夜まで、指示された通りに何かを作り続けている。


 一体、これは何なのだろう……。


「おいっ!ここを通るな!!裏から出ろ!!」

「!」


 部屋の外から聞こえた怒鳴り声に目を向ける。見ると、軍人が出入口を塞ぐように仁王立ちで立っていた。


「汚らわしい悪魔めっ、我々と同じ道を通るな!同じ建物に居るだけで吐き気がするというの」

「すいません軍曹―!裏から出すこと忘れてましたー!」


 自分たちを指揮するノベル、という青年が割って入った。


「!ノベル……囚人たちのことは、お前に任せてあるのだ。こやつらの失態は全てお前の責任になるからな」

「はい、すみません」

「よく躾ておけ」

「はい!」



―――カッ、カッ、カッ



 自分たちを睨みつけると、軍人は忌々しそうに去って行った。


「「「「「……」」」」」


 嫌な空気が流れる。


「裏から出るのもいいけど、あと10分くらいしたら、そこから出ても大丈夫だよ」


 明るい声で青年が言った。


「裏からだと時間掛かるからね。もうここらの人間は引き上げてるはずだから……軍曹が来てたのは想定外だったけど……たぶん誰とも会わずに出られるよ」



―――コツ、コツ……ガタッ



 そう言うと自分の席に戻り、青年は何かの作業を再開した。


「……やってられるか……」

「……ん?」

「やってられるかよ!!」



―――ガターンッ!!



 突然、一人の男が大声を上げて近くにあった椅子を蹴り飛ばした。


「どいつもこいつも馬鹿にしやがって!!なんでこんな目に遭わなくちゃならねえんだ!!」

「あの、そんな大声出したらまだ軍曹が……」

「うるせえ!!」



―――ガチャーン!!



 机の上の道具箱が落とされる。


「ちょっと!」



―――ダダダッ



 男は止まらない。今度は自分たちが作り続けている、何種類もの粉が入ったガラス瓶が並ぶ棚に向かって走り出した。


「!」



―――ダッ



 青年が目の色を変えて男の元へ走る。


「こんなものっ」


 男は無造作に瓶を掴んだ。


「割るな!!」

「「「「「!!」」」」」」


 聞いたこともない青年の怒号が響く。


「なっ……」


 男は動きを止めた。しかし、その拍子に瓶は手から滑り落ちた。


「っ!」



―――グイッ


―――ドォォォン!!



「「「「「!?」」」」」



 瓶が床に落ちたと思った瞬間、爆発が起こった。


「奥からバケツと布持ってきて!早く!」


 間一髪のところで男の腕を引いた青年が指示をとばす。何人かの者が、戸惑いながら水の入ったバケツと大判の布を運んできた。


「布をバケツに突っ込んで、充分濡らして」


 青年が冷静な口調で指示をする。


「……な、なんだよ……これ……」

「……」


 男の問いに、青年は答えなかった。



―――バタバタバタッ



「何事だ!!」


 先ほどの軍人が血相を変えて戻ってきた。部屋に入るや否や辺りを見回し、煙が上がる箇所とそこに座り込む男を見つけた。


「!、貴様っ!!」

「!」


 男の元へ憤怒の形相で走り寄る。


「何をしてくれたんだっ!!」



―――ドカッ



「うっ!!」


 軍人が男の頭を蹴り飛ばした。男が床に倒れ込む。


「貴重な兵器を無駄にしおって!!これはお前らの命よりも重要な」

「黙れ」

「……あ?」


 一瞬、誰がその言葉を発したのか分からなかった。しかし部屋を見渡す限り、その言葉を発したであろう人物は一人だった。


「命より大切な兵器があってたまるか」


 青年だった。


 丸眼鏡越しの紫の瞳に怒りの色が浮かぶ。その気迫に押されて、軍人は動けない。


「……まあ許してください、事故なんで。悪気があったわけじゃない」


 ね?と、いつもの気の抜けた調子で倒れた男に問いかける。男は黙って首を縦に振った。


「……このことは、上層部に報告させてもらう」

「わかりました、すみませんでした」


 丁寧に頭を下げる青年。その姿を一瞥し大きく舌打ちすると、軍人は荒々しく部屋を出て行った。



―――……



 静まり返る室内。遠ざかる軍人の足音だけが聞こえる。


「……ごめん!謝るの忘れてた」

「え?」


 床に座ったままの男に、青年は手を合わせた。


「解散のタイミングが悪かった……みんなも、すみませんでした!」

「「「「「……」」」」」



―――……



「あ、あの……」

「はい?」


 一人の男が、おずおずと手を挙げた。


「俺たちは……なにを作っているのでしょうか……?」

「「「「「!」」」」」

「あ~」


 誰もが聞きたかったことだった。みな固唾を呑み、伏し目がちに青年を見つめている。青年は顎に手を当てて上を向いた。が、すぐに顔を正面に戻し、はっきりと言った。


「新型爆弾」

「え……」

「作業効率が低下するから言うなっていわれてたんだけど、無理があるよね。やっぱり危ないよ」


 腕を組み、うんうんと頷く。


「貴方たちが作っているのはその一部なんだ。一部だけど、さっきみたいに瓶が割れて中の粉が空気に触れると、軽い爆発が起こる」

「「「「「!!」」」」」」



―――ザワッ


―――ザワザワッ



「しーっ!しーっ!」


 人指し指を口の前に立てながら、注目しろと言わんばかりに青年が大きく片手を振る。



―――……



 ざわめきが治まる。みなの視線が再び青年に注がれる。


「……とても危険な仕事だ。もうやりたくないでしょう?でもね」


 眼鏡の奥の、紫の瞳がきらりと光る。


「あと数日耐えて下さい。きっと状況が変わります」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ