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波風
―――アメリア軍管轄、VQ地区、某施設。
「(……騒がしいな)」
上層部の人間が工場内を行き来する様子を青年――ノベルは、眼鏡越しに見つめた。冷たい空気の流れるこの場所が、今朝はある意味活気を帯びている。
「(いや、昨晩からか)」
昨晩、軍が大量の人間をこの地域に連れて来たという噂を耳にした。しかもその人間は罪人や技術者ではなく、この国の人々に悪魔と呼ばれた囚人たちだという。
「おい、お前」
「はい?」
振り向くと、赤茶色の軍服を着たアメリアの軍人が立っていた。
「他国から来た技術者というのはお前か?」
「そうですけど」
「お前に重要な任務を与える」
ここの人間がこう言う時は、碌な話じゃない。
「今日から入る700人の悪魔達の指導を全てお前に任せる。いいな、これは重要な任務だ。我が国発展の為に尽力せよ」
「……」
ほらね、碌な話じゃない。と、ノベルは心の中で呟いた。




