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ライフ  作者: 道野ハル
ヴィランダ国
7/162

遭遇




―――ユッサ、ユッサ……



「―――」

「―――――――!」


 ……うん?誰か、喋ってる?


「……ついてたなっ……」

「本当に……!」


 声が弾んでる。楽しそうだ。何を話して……


「まだ若い女がいたとはな!」

「ああ!器量は悪いが、これだけ若けりゃまあいいだろ!」


 ……


 ちょっと待って。誰の話してます?



―――……スッ



 そっと目を開ける。地面が見えた。なんで地面が……あれ、私逆さになってる?かつがれてる?誰に……?



“ギュィィィンッ!!”


“カン!カン!カン!”



 えっと……さっき物凄くうるさかったから村長さんの家を出て、歩いてたら腕を掴まれて振り向いたら怪しい人たちがいて……


「そういや昨日、中央から武人が来たらしいぜ?」

「はっ、無駄なことするよな。こっちは神を名乗ってんだから何も出来るわけないのによ!」


 昨日きた武人……それって三人のこと?そして、神を名乗ってる?



“へへっ、ついてこい。神に捧げる”



 ……もしかしてこの人たち、ニセ神の手下?そういえば村長さんが言っていた。男たちは食料や物品、そして若い女性を奪っていくと。


『……っ』


 私、捕まった……!?


「おーい、戻ったぞー!」

『!』

「お?おーい!何かついでんだー!?」

「どうしたどうした?」


 前から野太い声が聞こえる。ひょっとして、ここはイオリさんたちが話してた男たちの拠点?


「うおっ!女じゃねえか!」

「どこで手に入れたんだ!?」

「ちょ、よく見せてくれ!」

『!!』


 やっぱり、ここがその廃屋なんだ……!どうしよう、逃げなきゃ。でもどうやって?


「へへっ、まあそう急かすな」



―――ガシッ



『……っ!』


 ゴツゴツした手が腰に触れる。嫌だ、恐い。どうしよう……!!



―――ダァァァンッ!



「なっ!!」

『!?』



 突然、なにかが地面に飛び降りてきた。目の前で激しい砂ぼこりが舞う。



―――グイッ



「この器量がわるいの、返してもらうよ」

『!』


 ふわりと体が上にあがる。この声は……。



―――……


―――……



 砂ぼこりが落ち着いて、少しずつ周りが見えてきた。


「……っぁ」

『!!』


 さっきまで私をかついでた男が……地面に沈んでる。私は細い腕に抱えられていた。誰の腕……?そっと顔を上げる。


『……』


 金色の髪と茶色の瞳があった。


「なっ、なんだお前はぁぁぁ!!」



―――シュッ


―――シュシュッ



『っ!』


 男たちがこちらを向いて一斉に剣を構えた。


「うーん、ほごしゃ?」



―――ダッ……ババババッ



「「「「「んなっ!?」」」」」


 そう答えると、ラルフさんは私を抱えたまま男たちの元に行き、足だけでその剣を払った。あっという間に全員が丸腰になる。


「く、くそぉぉぉぉぉっ!!」


 顔を真っ赤にした男たちが束になって向かってきた。



―――バッ



『!!わっ』


 ラルフさんは私を脇に抱えると、びっくりするくらい高く飛び上がった。



―――ガッ


―――トンッ


―――ゲシッ



「!!がっ」

「ああっ!!」

「……ぐうっ」


 そして足と空いてる方の手で、舞うように次々と男たちの頭部に踵落としや手刀を入れた。



―――ドサッ


―――ドサドサッ


―――……



 気が付くと、男たちは全員地面に伏していた。


「タナカ」

『えっ』


 抑揚のない声に顔を上げる。……ラルフさんは無表情だった。


「アンタ、外に出たわけ?」

『……はい』

「クソバカだね」


 ……何もいえない。



―――タッ



 ラルフさんはそれ以上は言わず、私を脇に抱えたまま廃屋に入っていった。





―――ドカッ


―――バキッ



「!!な、なんだお前たちは、ぐおっ」

「がはあっ」

「うわっ、ひぃぃぃぃ!!」


 岩で作られた建物は三階まであるみたいだった。ラルフさんは私を抱えたまま玄関にいた男たちを蹴散らすと、その足で二階に上がり、そこに居た男たちのことも涼しい顔で倒していった。


「つかれたー」

『……』


 いや、全然疲れて無さそうだ。何人もの剣を持った人たちと戦ったというのに(しかも私を抱えながら)すごい体力だ……。



―――ダダダ……ザッ



「タナカ!?」

『あっ!!』


 聞き覚えのある声に振り返ると部屋の入口にイオリさんとユラさんが立っていた。二人とも目を丸くして私を見ている。


「なん……でタナカが……?」

『あ……』

「いっちょまえに攫われてた」

「さらっ……!?」



―――バッ



 イオリさんがすごい勢いでこちらを見た。私は咄嗟に目を逸らした。


「……お前、家の外に出たのか?」

『……』


 言えない……恐くて言えない。



―――ドタドタドタッ……ザザッ



「「『!』」」


 気まずさに身を縮めていると、上の階から剣を持った男たちが下りてきた。


「!!、なんだお前らはぁぁぁ!!」

「生きて帰れると思うなよ!!」


 男たちは剣を振りかざして私たちに向かってきた。しかし、

 


―――フッ



 三人は物ともせずにその剣を躱した。



―――バシッ


―――ダンッ


―――ゲシッ



 そして素手で軽々と相手を叩き伏せていった。


「な、なんなんだコイツら……!」

「クソッ、戻るぞ!」



――――ダダダッ……



 歴然とした力の差を見せつけられて、何人か上に引き返して行った。


『……』

「ボスは上か」

「めんどくさい」

「ゆくぞ!もう少しで終わりだっ」


 三人(と私)は直ぐさま男たちを追って階段を上った。



―――ダダダダッ


―――ドォォォォン!!



「「『!』」」


 三階に到達する直前、突然、銃声が鳴り響いた。私たちは咄嗟に階段の隅に身を潜めた。


「はははは!そんな所にいないで中へ入ったらどうだ!!」


 ほどなくして部屋の中から挑発的な男の声が聞こえた。



―――ずいっ



「いまいくよ」

『!、えっ』


 ラルフさんは私をユラさんの前に突き出すと、何食わぬ顔で一人で三階の部屋の中に入って行った。



―――バタン……



「……」

「……」


 ユラさんとイオリさんは動かない。黙って扉を見つめている。……え、まずいんじゃないか。だって相手は銃を持って……



―――ドォォォォン!ドォォォォン!ドォォォォン!!



『!!』



 ラルフさんが入った直後、立て続けに銃声が三発鳴り響いた。



―――……


―――……



 重い沈黙が横たわる。


 部屋の中からは男の声も、ラルフさんの声も聞こえなかった。




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