不協和音
「お前には分からないよ、生まれたときから違うんだ」
どうすればいい?
どうしたら……
私の言葉は貴方に届くだろうか。
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収容所爆発から数刻後――深夜。
アメリア城、王の執務室。
「……もう一度、言ってみよ」
「はい」
ラシュナは深く息を吸い、兄の黒い瞳を見据えて言った。
「私が看守長に命令し、囚人たちを避難させました」
ドグリアの太い眉がピクリと動く。
「……何故、そのようなことをした」
「囚人たちを見殺しにしたくなかったからです」
「悪魔たちの処刑は王である私が決めたことだ。お前がしたことは反逆行為に他ならぬ……」
「存じております」
「……」
「兄上、お許しいただけるなら、私はこの国を出ようと思います」
「!!」
予想もしなかったラシュナの言葉に、ドグリアは動揺した。
「国を出る……だと?」
「はい。願わくば囚人たちと数名の部下を連れて、アメリア国を離れたいと思っております」
「……」
黙り込むドグリア。ラシュナは暫くドグリアの返答を待ったが、やがて自ら口を開いた。
「私を、国外追放としていただけないでしょうか。反逆者として扱っていただいてかまいません。王の意向に背き無断で囚人たちを逃がしたと、国民にそう伝えていただけないでしょうか」
「……本気で言っているのか」
「はい」
「姫の座を、捨ててもよいと」
「はい」
「……」
二人は暫く無言で見つめ合った。
「……そうまでして、あの悪魔たちを救いたいのか」
ドグリアが暗い瞳で訊ねる。ラシュナは一瞬硬直したが、すぐに強い瞳で見つめ返した。
「はい」
「……」
ドグリアはラシュナから目線を外した。そして何か考えた後、再び彼女を見て口を開いた。
「明日の式典には、何事もなかったように出席しろ。今回の件や悪魔狩りに関する発言は一切禁止とする」
「!」
「事は重大だ。国民の不安を煽らぬためにも慎重に行動せねばならぬ。お前の処遇も、直ぐには決められぬ……望みを叶えたければ、暫く大人しくしていろ」
「……囚人たちは」
「悪魔たちは一旦別の場所に移動させる。奴らの処遇もお前次第だ」
「……わかりました」
頭を下げ、ラシュナは執務室を後にした。
―――カツ、カツ……
誰もいない静かな廊下を歩く。ふと、窓に目が行った。
―――カタッ、カタカタッ
風が強まってきたのか、硝子が揺れている。疲れた足で吸い込まれるようにそこに向かい、外を見た。
「!」
城門から、自分が連れてきた囚人達が兵隊に連れられてどこかへ歩いて行くのが見えた。
……兄は、最初から彼らをどうするか決めていたのだ。自分の話を聞く前から。
―――キリッ
無意識に唇を噛む。
――――カタカタカタッ
風は強くなる一方だ。




