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不変
「第一部隊、西棟に設置!第二部隊、東棟へ……」
……なにが始まるのだろう。
薄暗い牢屋の中で、ケビンは外から聞こえる声に耳を澄ませていた。
「おい、なんで軍人がこんなにいるんだよ」
「ここで事件でもあったのか?」
同じ牢に収監されている者たちも、不安げに外の様子を伺っている。牢屋の外では看守ではなく、軍人が慌てて何かを設置しているようだった。
しかし、自分たちがそれを知ることはない。質問したところで怒鳴られるだけた。ケビンは視線を反対側に向けた。
「……」
明かり取りから月が見える。月の周りにはいくつかの雲が浮かんでいる。昼間見た空を思い出した。あの時も、おかしな形の雲が塀の上に浮かんでいた。
……そういえば、あの少年はなんだったのだろう。正義、偽善、どちらにも見えるがどちらでもないような気もする。不思議な少年だった。
だが、自分には関係ない。
目の前に伸びる道は変わらない。
「……あ」
雲が流れて行ってしまった。もう見えない。




