暗い夜でも
イオリさんとリンさんの活躍で、誰一人死者を出さずに立て籠もり事件は幕を閉じた。ロレンスさんやオウド軍の人たちからとても感謝され、その夜はお城で晩餐会が開かれた。
―――……
晩餐会が終わって城を出ると、街は静まり返っていた。月のない暗い夜だ。ランプの光を頼りに、四人で並んで歩く。
「あの青年、少し表情が柔らかくなっていたな」
「リンのことか」
「ああ」
『(ふふっ)』
たぶん、イオリさんのお陰なんだろうな。
「なんでニヤニヤしてんの?」
『え?』
ラルフが私を見る。あれ、顔に出てたか……。
『いや、イオリさんのお陰なんじゃないかと思って』
「!」
「どうゆうことだ、タナカ殿?」
『あのですね……もがっ!!』
イオリさんに、急に口を塞がれた。
「……黙ってろ」
『……ふあい(はい)』
そう言うイオリさんの顔は少し赤かった。
「なんなの?」
「イオリ、情報は共有するべきだ!」
「うるせえ!!」
『(喋りたい……)』
暫くして、やっとイオリさんの手から解放された。
「ふあ〜ねむ……」
「安心しろラルフ!明日はゆっくり出来るぞ!!」
「へえ、そうなん……zzz……」
「ここで寝んな」
『……』
“生きる意味なんてなくていい。無理やりつくる必要もねえ。自分がいて、誰かを感じて生きられれば、それでいいんだ”
……あの時のイオリさん、カッコ良かったなあ。
「……なんだよタナカ」
『え!?いや、なんでも!!』
「(ヒソヒソ声)タナカ殿、あとでコッソリ教えてくれ!」
『(ヒソヒソ声)はいっ!』
「全部聞こえてんぞ」
「『(はっ!!)』」
また口を塞がれたら困るので、もったいないけど、このまま黙っておくことにした。
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「いやあ~、実に美味い食事だった!」
「カタス国の連中も良い奴らだったな……ん?」
ジミニヤ国の三人が帰ってくると、宿の入口に小さな子供と女性が立っていた。二人とも、この国特有の白くて長い服を着ている。
「……あの、ジミニヤ国の方々でございますか?」
女性が緊張した面持ちで訊ねてきた。
「?そうだが、あなた方は……」
「私共は、教会に立て籠もった者の家族でございます」
「「!!」」
「この度は、誠に申し訳ありませんでした……」
彼女は地に跪いて、深く頭を垂れた。
「こうして、皆様の前に現れることさえおこがましいと重々承知しているのですが、どうしても、お礼を言いたくて……」
「お礼……?」
「はい。夫はカタス国の御二人と、ジミニヤ国のリン様に命を救っていただいたと申しておりました……」
「!」
二人の後ろに立っていたリンが、思わず女性を見る。
「!あなたが、リン様でいらっしゃいますか?」
「……そうだが」
「……っ」
彼女は瞳に涙を浮かべて、リンの足元に縋りつくように蹲った。
「本当に、本当にありがとうございます……っ、あの人の命を救ってくださって……ありがとうございます……っ」
「……」
「お兄ちゃんっ!」
―――ずいっ
一緒に来ていた子供が、果物が入った大きな籠をリンに差し出した。
「え?」
「父ちゃん助けてくれてありがとう!!」
「……」
「?、もらってくれよ?」
「……ああ」
小さな手から、そっと籠を受け取った。




