伸ばした手
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―――トンッ
茂みの中に降り立った。
―――ゴォォォォ
―――パチパチパチッ
上を見る。さっきまでいた部屋が、夥しい炎に包まれていた。
「イオリ、手」
「!、わりい」
慌てて手を離す。……また、こいつに助けられた。
「……やっぱ、来てたんだな」
「うん」
そう答えると、ラルフは背中を向けて歩き出した。そのまま何処かへ行くのかと思ったが、少し離れたところで奴は足を止めた。
「イオリ」
「?なんだ」
「ごめんね」
……
……
……息が詰まった。
こいつに謝られたのは初めてだ。なにを謝ったんだ……?俺をここに来させたことか?こんなことになるなんて思わなかったってことか?確かに今回は思ってた以上に危険だった。けれど……
「……謝んな」
お前にそんなこと言われたくない。そんなふうに言われたくない。俺は深く息を吸った。
「全員助かった。お前のお陰で俺も助かった。それでいいじゃねえか」
「うん」
ラルフは再び歩き出した。白い背中が遠ざかる。
――――ガサガサッ
「!」
ふと、背後の茂みが揺れた。
―――ガサッ
「!あ、あなたはカタス国の!!」
「!」
オウド軍の兵だった。
「お怪我はありませんか!?」
「ああ……お前達は?」
「お陰様で!まもなく消火活動が開始されます、どうぞこちらへ!」
兵に案内され、白いテントが張られた場所へ移動する。テントの中にはタナカがいた。
『!!』
「タナカ、無事だっ」
『や……わ……うそ……』
「?どうし」
『い、い、生きててよかったでずぅ゛ぅ゛ぅ゛っ』
「!」
堰を切ったようにタナカが泣く。どうすればいいのか、何を言えば落ち着かせることができるのか……分からない。
戸惑いながら、小さな肩に手を伸ばした。
―――ポン、ポン……
何もできない。気の利いた言葉も言えない。タナカにも、あいつにも。
『う゛っ……う゛っ……』
「……」
でも
“いまのイオリなら大丈夫だよ、たぶん”
……きっと、俺に出来ることはまだあるはずだ。




