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ライフ  作者: 道野ハル
ミアン国
37/162

過去



 ミアン国へ戻った私たちは、街の人に爆発があった場所を教えてもらい、“チナ地区”という所に向かった。


「!、あの人だかりがそうではないか!?」


 ユラさんの声に顔を向けると、荒れた土地に数人の軍人さんが立ってるのが見えた。みんな何かを取り囲むように円になっている。


 私たちは足を止めて、少し離れた所から様子を伺った。


「……中心に誰かいるみてえだが」

「うむ。ここからではよく見えな」

「あははっ」

「「『!』」」


 ふと、聞き慣れた声がした。


「……」

「……」

『……』


 誰からともなく顔を見合す。



―――……ザッ



 イオリさんが頷いたのをきっかけに、私たちは円に向かって歩き出した。暫くすると、軍人さんの隙間からラルフさんとタンジくんと――デミングさんが見えた。二人が声を上げて笑ってる横で、デミングさんは口を結んでる。これは……どうゆう状況?


「あれ、もどってきたの?」


 私たちに気付いたラルフさんが、ケロリとした顔で言った。


「……ラルフ、どうゆう状況だ」


 イオリさんとユラさんも困惑している。


「わかい?」

「……和解?」

「あってる?おじさ」

「デミングだ」

「「『!』」」


 デミングさんが突っ込んだ!いつの間にそんな仲に……!!驚きを隠せずにいると、デミングさんがゆっくり私たちに顔を向けた。


「……君たちも、もう一度我々の拠点に来てもらえるか」

「「『!!』」」

「なに、大したことじゃない。形だけの事情聴取だ。……友だちの友だちに、手荒なことはしない」



--------



 数時間後。

 

 タンジくんが掘り出した爆弾は、アメリア軍が軍事演習の時に撤去し忘れたものだったということが分かった。取り調べの最中にその報告を聞いたデミングさんは椅子から飛び降りて、土下座して、何度もタンジくんに謝った。……やっぱり悪い人じゃなかったみたいだ。


 建物から出ると、辺りはすっかり夜になっていた。私たちはもう一晩ミアン国に泊まることにした。


「宿まで送るよ!」


 そう言って、タンジくんは大きな歩幅で歩き出した。昨日と同じ宿に向かう。


「……あれ?ラルフは!?」

『えっ』


 気が付くと、ラルフさんがいなくなっていた。


「ったく……またどっか行きやがって」


 イオリさんが頭を掻く。


「……もう、ラルフに会えないのかな?」


 不安気に訊ねるタンジくん。するとユラさんが腰を屈めて、穏やかな口調でタンジくんに言った。


「タンジ殿。我々は明日の朝、この国を発つつもりだ。保証はできないが、その時ならラルフに会えるかもしれぬ」

「!、わかった!!」


 土で汚れた顔が、ぱぁぁと輝く。タンジくんは目に見えて元気になり、色んな話をしながら私たちを宿の入口まで送ってくれた。


「じゃ、また明日!」

「ああ」


 そして背中を向けて来た道を戻って行った。


 しかし、



―――ピタッ



「「『?』」」


 突然、タンジくんが止まった。どうしたんだろう……?暫く様子を見ていると、タンジくんはバッとこちらを振り向いて、真剣な表情で私たちのもとに帰ってきた。


「あのさ、」

「?なんだ」

「ラルフって友だちとか家族に虐められてたの?」


 ……


 ……


 ……何を、言ってるの?


「……なぜ、そんなことを聞くのだ?」

「ラルフが言ってたんだ。“友だちでも家族でも、ひどいことをするときはあるよ”って」

「……」

「それで、なんでそんなことするんだよって聞いたら、“さみしいって気持ちがあるせいじゃないかな”って……悲しそうな顔で言ったんだ……」



―――ヒュゥゥゥ……



 砂混じりの風が吹く。風は、やけに冷たかった。


「どうなんだよ?ラルフは悲しい思いしてたのかっ?」

「……タンジ。俺らもラルフの昔のことは知らねえんだ」

「え」

「だが、」


 イオリさんが静かにタンジくんを見つめる。


「俺たちはあいつを一人にしない」

「……」

「だから今、ここにいる」

「……そっか」


 タンジくんはしばらく黙り込んだ後、それじゃ、と言って去って行った。


「……」

「……」

『……』



―――ヒュォォォ……



 誰も、何も喋らなかった。 




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