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ライフ  作者: 道野ハル
ミアン国
33/162

不穏な気配




「―――!―――!」



 嵐



 境目が分からないほど、灰色に荒れる空と大地



「2000年―――ず、必ず―――迎えに行く!!」



 聞いてはいけない



 しかし耳に入ってくる



「その時は――――――――よう」



 ああ そんなことが出来たら



 出来たらどんなに……



 ……



 ……




*****



 どんなに……



「……ナカ、タナカ……」

『……』

「タナカ!!いい加減起きやが……」



―――ガシッ



「!?」



―――グイッッ



「なっ……」



―――ぎゅっ……



「……タナカ……?」



 どんなに 幸せだろうか



「……どうした……」

『……』

「……タナカ、」

『……』

「……大丈夫か……?」

『……ん?』

 

 ……


 夢から覚めると、私はイオリさんに抱きついていた。


 ……


 抱きつ……


 ……


『うぎゃぁぁぁぁぁっ!!』

「!?」



―――バタバタバタッ


―――バンッ



「タナカ殿、どうした!?」


 ユラさんが走り込んできた。


「一体何があっ……」

「……」

『……』


 ベッドの脇にイオリさん。そして私はベッドから離れた部屋の壁に張り付いている。


「……イオリ、まさかお前タナカ殿を……」

「んなワケあるか!!」

「なに夜這い?あ、朝這いか」

「違げぇぇぇ!!」


 ユラさんといつの間にかやってきたラルフさんによって、イオリさんが犯罪者に仕立て上げられている……!と、とにかく誤解を解かなければ……


『あ、あのすいません!私が寝ぼけてイオリさんに抱きつきました!!』


 あ、抱きついたことまで言わなくてもよかったか。


「……タ、タナカ殿……が……?」


 複雑そうな表情で私を見るユラさん。……話きいてます?寝ぼけてって言いましたよね?


「ふーん。タナカもいっちょまえに欲求不満……」

『黙ってくれる?』


 あ、タメ語使っちゃった。


「はあ……」


 イオリさんが溜息をついた。


「……いいから早く支度しろ、時間過ぎてんぞ」

『は、はい、すいませ……』

「それと、」

『?』

「風呂入れ」

『……はい』

 

 なんか、朝からボロボロだ。



-------



 早めに朝食をとり、ユラさんとイオリさんと三人で街に出た(ラルフさんは気付いたらいなかった)。治安が良い国ではないので、皆で一緒に行動することにしたのだ。



―――ビュォォォ……


―――ヒュゥゥゥ……



 この国の建物は、みんな何処か壊れていた。壊れたところは布や藁のようなもので覆ってあって風が吹くたびに捲れたり、飛んだりしていた。貧しい国……なのかもしれない。



「タナカ殿、先ほどは恐い夢でもみたのか?」


 商店に向かう道すがら、ユラさんが訊ねてきた。


『あ、いや、恐いというか……なんか、寂しい夢でした』

「ほう、寂しい夢?」

『はい。誰かと離れなきゃいけなくて……そしたらその誰かが、2000年に何とかって言ってきて』

「「!」」

『?、どうかしましたか?』

「いや……不思議な夢だと思ったのだ」

「……」

「それで、どうなったのだ?」

『あ、それで、そうできたらどんなに幸せなんだろうって思って……そしたら、なんか寂しい気持ちになりまして……』

「……寂しくて、そこにいたイオリに抱きついた、と」

『はい……。あのイオリさん、すいませんでした』

「いや……」

『……?』


 なんだか、二人の様子が少し変な気がする。



―――ドン!!



『わっ』


 突然、足下に何かがぶつかってきた。


『あ』

「あ……」


 ボサボサの髪の男の子……タンジくんだった。


「こら!観念しろ!」

「「「『!』」」」


 前方から、赤茶色の軍服を着た男の人が走ってきた。タンジくんが私の後ろに回り込む。


『え?』


 軍服の人が私の前で止まる。状況を呑み込めないでいると、ユラさんがすっと横に立った。


「……いかがされたかな?」

「なんだ貴様らは」

「旅の者だが」

「旅?その子供とはどうゆう関係だ」

「子供?」


 ユラさんが私の後ろにいるタンジくんを見やる。


「いや、知らな」

「友だちだ!!」

「「『!』」」

「……だよな?」

『えっ』


 潤んだ瞳で見上げられる。ひ、否定できない……。


『……はい』

「あれ、タンジじゃん」

『え?』


 気の抜けた声に振り向くと、いつの間にか後ろにラルフさんがいた。


「「!」」


 イオリさんとユラさんが目を見開く。


「なにしてんの?」

「えっ?あっ、えっと」


 戸惑うタンジくんに飄々と話し掛けるラルフさん。男の人がラルフさんを鋭く睨む。


「貴様も、この子供の仲間か」

「友だち」



―――ガシャッ、ガシャッ、ガシャッ



 ラルフさんの回答を聞くや否や、私とタンジくんとラルフさんに手錠がかけられた。


「公務執行妨害罪で貴様ら三人を拘束する」

『!?』

「……タナカ殿、あれを」

『え?』


 ユラさんが囁く。


「短刀を」

『!』


 クレハさんから貰った短刀!いざという時に身を守ってくれるって……!!


 ……


 ……あ。


『……ぃてきました』

「……うん?」

『……宿に置いてきました』

「……」

「なんの話をしている?」


 ギロリと睨まれる。ま、まずい!ユラさんまで捕まっちゃ……


「あいたたたたっ!!」


 突然、タンジくんがお腹を抱えてしゃがみ込んだ。


「なんだ?」


 男の人の視線がユラさんから外れる。


「腹いてえよ~さっき食べた木の実のせいだ~くそ~漏れる~」

「ちっ、収容所まで我慢しろ。歩け!」

「へ~い」

「ふあ~」



―――ザッ……



 男の人に促されて歩き出す。ど、どうなっちゃうんだろう……。不安な思いで、そっと後ろを振り向いた。


「(まってろ)」

『!』

「……」


 まってろ、イオリさんの口は確かにそう動いた。隣でユラさんも頷いていた。


 私は気付かれないように、小さく首を縦に振った。




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