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ライフ  作者: 道野ハル
ミアン国
32/162

友だち



『……ぉえっ……』

「よ~しよし」


 私たちは“ミアン国”に入国した。今日この国に泊まって、明日にはオウド国に入国する。長かった旅も終わりに近付いている。


『ぅ……うっぷ』

「ほらほら、我慢せず全部吐いてしまうのだ」

『……ぅっ』


 旅の遅れを取り戻すため、一つ前の国から馬車に乗ってここまできた。朝から夕方まで揺れっぱなしだった。……地獄だった。


「イオリ、タナカ殿を頼む!俺は宿を探してくる」

「はいよ」


 ユラさんに替わって、イオリさんが私の隣にしゃがみ込んで背中をさすってくれた。


『……すいません』

「気にすんな。悪いのは金落としたユラだ」


 確かに。


「晩メシなにかなあ」


 ……人が吐いてる横で、夕飯の話?


「吐いたらその分いっぱい食べられるの?」

『……え、いや、そんなことないと思いますけど……』

「吐き損じゃん」


 黙っててくれないかな……。


「おーい!!」

『?』


 ふと、遠くから男の子の声がした。



―――ダダダダッ



 10歳くらいの男の子が走ってくる。汚れた麻の上下を着ていて、足元は草鞋。男の子は私たちの前で足を止めると、大きな声で言った。


「俺と友だちになろう!!」

『え?』

「は?」


 ……なんだ?


「俺はタンジ!あんた達は!?」

『え?た、田中正子で』

「おいガキ、なんだいきなり」


 イオリさんの瞳が鋭くなる。


「あんた達と友だちになりたいんだよ!いいだろ!?」

「なに言って」

「俺、ラルフ」

「『!?』」


 一番友達にならなそうな人が名乗った……!


「ゲロ吐いてるのがタナカ、目つき悪いのがイオリだよ」

「おい」

「ラルフ、タナカ、イオリ……」


 “タンジ”くんは土で汚れた顔をぱぁぁと輝かせた。


「よろしくなっ!!」


 そう言うと、手を振りながら笑顔で去って行った。


「……なんだあのガキは」


 変わった子だな……。



--------



 夜。宿の食堂。


「色々聞いて回ったが……やはり、この国は安全とは言えないようだ」


 ユラさんは箸を置くと、神妙な面持ちで言った。


「ミアン国は、オウド国とアメリア国の中間地点にあたる。そのためアメリア軍が街の一角に拠点を置き、オウド国と開戦になった時のために備えているそうだ」

「……アメリア軍に遭遇したら面倒だな」

「左様。長居は無用だ。明日の朝、必要な物だけ揃えたら、速やかに出ることにしよう」

「ああ」

『はい』

「(もぐもぐ)」


 明日の集合時間を決めて、私たちは早々に解散した。




―――ガチャッ……ボスンッ



 部屋に戻ってベッドに転がる。


 ……戦争、か。教科書とか映画で見たことはあるけど、体験したことは勿論ない。そんなものが、こんな近くにあるなんて……。



“俺と友だちになろう!!”



 タンジくん、っていったっけ。あんな子が、こんな危ない所にいるんだ。ちょっと変わってるけど普通の男の子だった。なんだか信じられな……


『……z……zz』


 不安な気持ちはあったけど、馬車に揺られて疲れたせいか、瞼が重くなってきた。……あ、もう駄目だ、起きれない……お風呂、明日の朝にしよ……


 私はすぐに眠りにおちた。




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