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ライフ  作者: 道野ハル
暗闇
31/162

歯車



―――コツ、コツ、



 暗く、長い廊下。


 光は届かず、朝も昼も夜もない。


 何度来ても気が滅入る場所……しかし、あの御方はここにいる。



―――コツ



「エポナ様」


 闇の向こうに話し掛ける。


「ふふっ」


 掠れた笑い声が聞こえた。


「お前がしくじるとは、珍しいこともあるものだな。ゴデチア」

「申し訳ありません」

「責めているのではない、言葉の通りだ」

「……」

「ヌヒ族の目は失ったが、あれが完成した。すぐに実戦で使えるようにしよう」

「ありがとうございます」

「で……なにがあった」


 声が止まる。こちらの気配を探っている。


「……任務遂行中、奇妙な者に遭遇しました」

「ほう」

「その者は一人の団員から剣を奪い、その剣一つで十数名を、急所を外して薙ぎ倒しました。最後に残ったのは私一人となりましたが、腕を見た瞬間……その者は動きを止めました」

「腕?」

「はい。彼はエポナ様を知っているようで、言付けを預かりました。ヌヒ族にもナウェ国にも、手を出すな――と」

「……」

「エポナ様の、昔の名前も知っておりました」



―――フッ



 空気が止まる。


 深く息を吸い、言葉が揺れぬように続けた。


「金色の髪、茶色の双眸、齢は二十に満たない少年、名を……ラルフ、といいます」


 ……


 ……


 ……止まった。


 あの御方の全てが止まったのだ。


 そして


「…………あ……ああっ……あああ……」

「……」


 動き出す


 幾年も幾年も消えなかったそれは


 貴方を


 俺を


 そして


 やがて世界をも、変えてしまうのだろう




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