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ライフ  作者: 道野ハル
パリツェ国
20/162

芽生え




―――サワッ


―――サワサワ……



 割れたガラス戸の向こうから木の葉の揺れる音が聞こえる。この場で起こった事とは裏腹に、外は眩しい光で満ち溢れていた。


「あのさ」

「え?」


 ふと、ラルフさんがヴェルカさんに顔を向けた。その表情は逆光で見えない。


「世界がかわることだってあるよ」

「……」


 抑揚のない、風みたいな声だった。


「タナカ」

『!、え』

「最後までちゃんとはたらきなよ」

『あ、うん』



―――スタスタスタ



 それだけ言うと、ラルフさんは何ごとも無かったように飄々と食堂を出て行った。


『……』



 あの人は、いつも何を考えているんだろう?


 どんな目で物事を見て、なにを感じているのだろう


 知りたい……


 今までどうやって生きてきたのか


 200年目をどうやって生きていくのか




―――バタバタバタッ



「ちょ、ちょっと待って!!」

「何かお礼を……!」

「あ、名前は!?」


 我に返った人々が慌ててラルフさんを追いかける。通り過ぎて行く幾つもの影を私は他人事のように眺めていた。……暫くすると、食堂には私とヴェルカさんの二人だけになった。


「マサコは、行かなくていの?」

『え』


 どこかぼんやりした様子でヴェルカさんが訊ねる。私?私は……


『大丈夫です』

「そう……」


 だって、宿に帰れば会えるから。またその顔を見ることができるから。




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