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ライフ  作者: 道野ハル
プロローグ
2/162

“神”




―――ザッ、ザッ、ザッ……



 草原の中の凸凹した道を歩き続ける。歩きながら和服の――イオリさんから、ざっくりとした説明を受けた。


 話によると、この三人はある国から派遣されている“センコウ”と呼ばれる人たちで、依頼された国に行っては事件を解決しているそうだ。なんでもそれは“ニセ神潰し”というもので、自分のことを神だと名乗って悪さをする人間を捕まえる仕事らしい。



「何か質問あるか」

『……いえ』


 全く分からない。質問する気がおきないほど何も分からない……。というか結局ここはどこなんだ。どうして私はここにいるんだ。



―――くるっ



「アンタの星に神はいるの?」

『えっ?』


 前を歩いていたラルフさん(私より年下に見えるけど幾つか分からないから一応さん付けにしておこう)が、金色の髪をふわりと揺らして振り返った。


 で、なんだっけ。あ、神がいるかって?


『え、と……たぶんいると思います』

「どんなやつ?」

『どんな?』

「うん」

『え……キ、キリスト?』

「きりすと?」

『あ、いや、よく分かんないんですけど』

「ふーん」


 ラルフさんはへらっと笑った。


「この星の神はかってなんだよ。世界をおわらせようとする」

『え?』

「言い伝えだ。誰が言い出したのか分からねえし、本当かどうかも分からねえ」


 イオリさんが少し早口で言った。言い伝え……?


「“この星には神がいる 見つけ出せ神を”」

『……』

「言い伝えを信じて本気で捜す奴もいれば、それを利用して自分が神だと名乗り悪事を働く奴もいる。後者を捕らえるのが俺たちの仕事だ」

『……なるほど』


 だから“ニセ神潰し”なのか。


「そういえば、異星人殿の星は何というのだ?」


 民族衣装の――ユラさんが、横顔を向けて訊ねてきた。っていうか異星人殿って……。まあいいや、とりあえず合わせておこう。


『あ、地球です』

「ほう、ちきゅう。不思議な響きであるな」

『あ、はい』


 会話はそこで途切れた。



―――ザッ、ザッ、ザッ



 景色は一向に変わらない……。相変わらずの草原と見渡す限りの青い空。どこかに交番でも出てこないかなと思ってたけど、建物はおろか人の影すら見つからない。私、本当にどこに来ちゃったんだろう……。



“正子~、時間大丈夫なの~?”


“いってらっしゃい”



 ふと、家を出る前の母とのやりとりを思い出した。ちょっと泣きそうになった。





―――ザッ、ザッ



「おお!見えたぞ!」

『!』


 日が暮れたころ、ようやく遠くに建物らしき影が見えた。久々に感じる人の気配に私は再び泣きそうになった。


「走るぞ、異星人殿!」

『へっ?』



―――ダダッ



 そう言うや否や、前を歩ていたユラさんとラルフさんが、いきなり走りはじめた。彼らの行く先には松明に照らされた大きな門がある。何だろあれ……テーマパークの入場門?



―――ガシッ



「行くぞ」

『え』



―――ダッ!



『!?』


 気が付くと、私はイオリさんに手首を掴まれ強制的に走らされていた。



―――ダダダッ


―――ダッ、ダダッ



「もっと足動かせ!」

『(ひいっ!!)、は、はいっ!!』


 あれ……これもしかして攫われてる?私この人たちに誘拐されてる!?


「急げやぁぁぁぁぁ!!」

『!!、はぃぃぃぃっ!!』



―――ビュンッ!!



 恐い!この人の顔超恐い!!



―――ダダダッ


―――ダダダダッ



「えー、只今の時刻を持って閉門……」

「あいや待たれーいっ!!」

「えっ!?」


 門を閉じていた男の人がユラさんの絶叫にビクッと止まった。


「今だぁぁぁ!!」

『(わぁぁぁっ!!)』


 

―――ダダダダッ


―――ズザァァァッ



「!、へ、閉門ー!」



―――ギィィィッ……バタァァンッ


―――……



「ふうっ、何とか間に合った、な!」

「ギリギリな……」

「走った~」

『……うっぷ(走りすぎて気持ち悪い)』


 なんかよく分からないけど、私たちは門が閉まるギリギリで中に入った。こんなに走ったの生まれて初めてだ……。



―――タッ……



「あの~、あなた方は……?」

『!』


 門を閉めていた人が、そろりそろりと近づいて来た。西洋の軍人さんみたいな恰好だ……。やっぱりここは何処かのテーマパークなのかな?


「定刻ギリギリの入門を許可していただき感謝する!!」



―――バッ



 色々考えていると、ユラさんが一枚の紙を持って勢いよく立ち上がった。


「我々はカタス国のセンコウだ。王への謁見を頼む!」

 

 


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