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ライフ  作者: 道野ハル
帰路
160/162

エンドロール

 


 イオリさんとユラさんに別れを告げて、私は走り出した。



―――ザザッ


―――ザザザザッ



『はあっ、はあっ……』


 どれくらい走っただろうか……景色は一向に変わらない。どこまでも続く青い空と緑の草原――そういえば、初めてここに来た時もこんな光景が広がってたっけ……



“ここは宇宙のなかのべつの星。アンタはたまたま、やってきた”



 あの時は三人のことを疑っていて、誰か助けてくれないかなって不安な気持ちで歩いてた。……でも、今は逆だ。皆がいればいいのに。皆が近くに居たらどんなに、



“綺麗になった”


“うむ。出会った頃と見違えるほど、タナカ殿は綺麗になった”



 ……いや、起こらなかった事を考えるのはやめよう。それより、ちゃんと今を見たい。私は……皆を好きになったからここに居る。嬉しい出会いと悲しい別れがあったから、こうして一人でも走って行ける。



―――バッ、……ブンッ!



 視線を上げて腕を振る。体のあちこちが痛い……。でも止まるわけにはいかない、止まればそのぶん遠くなる。……動け、もっと動け。後でどうなってもいいからとにかく今は動き続け……



―――ぐらっ


―――ズシャァァァッ



『っ!、……』


 足がもつれた、と思った次の瞬間には目の前に茶色い地面があった。土と草いきれの匂いがどっと胸に流れこむ。私……なにやってるんだろう。ふいに目の奥が熱くなる。……ダメだ、立ち上がらないと。想ってても願ってても、動かなければ何も変わらない。



―――バッ、ダダッ



『っはあっ……』



―――……


―――チュンチュンッ……



『はっ、……』


 ああ、頭上は嘘みたいに穏やかだ。白い雲がゆっくりと流れて、小鳥が優雅に飛んでいく。



“空は美しいものじゃない、風は優しくなんかない”



 あれは、こうゆうことなのかな……。自分だけが置いて行かれてる感覚――空が青いほど、葉の緑が鮮やかなほどズンと心が重くなる。……つらいな。きっとラルフはこの何十倍も苦しんで



―――フッ



『!』


 ふと、見えている景色に違和感を覚えた。……同じだ。ここに来た時と。



“異星人は、神の孤独に引かれてこの星にやってくる”



『っ待ってよ』


 いま会えなければ、もうラルフに会えない。あの願いが叶ったらこの星に引き寄せられることは二度と……



“たのしそうだなあ”


“贅沢だね、呼ばれるだけでいいのに”


“……ありがと”



 会いたい、会いたい


 まだ何も言えてない 何も出来てない



―――カッ



『!!待って、待って、待っ』



―――……




 視界が白に覆われる直前、遠くの空に大きな鳥が見えた気がした。




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