エンドロール
イオリさんとユラさんに別れを告げて、私は走り出した。
―――ザザッ
―――ザザザザッ
『はあっ、はあっ……』
どれくらい走っただろうか……景色は一向に変わらない。どこまでも続く青い空と緑の草原――そういえば、初めてここに来た時もこんな光景が広がってたっけ……
“ここは宇宙のなかのべつの星。アンタはたまたま、やってきた”
あの時は三人のことを疑っていて、誰か助けてくれないかなって不安な気持ちで歩いてた。……でも、今は逆だ。皆がいればいいのに。皆が近くに居たらどんなに、
“綺麗になった”
“うむ。出会った頃と見違えるほど、タナカ殿は綺麗になった”
……いや、起こらなかった事を考えるのはやめよう。それより、ちゃんと今を見たい。私は……皆を好きになったからここに居る。嬉しい出会いと悲しい別れがあったから、こうして一人でも走って行ける。
―――バッ、……ブンッ!
視線を上げて腕を振る。体のあちこちが痛い……。でも止まるわけにはいかない、止まればそのぶん遠くなる。……動け、もっと動け。後でどうなってもいいからとにかく今は動き続け……
―――ぐらっ
―――ズシャァァァッ
『っ!、……』
足がもつれた、と思った次の瞬間には目の前に茶色い地面があった。土と草いきれの匂いがどっと胸に流れこむ。私……なにやってるんだろう。ふいに目の奥が熱くなる。……ダメだ、立ち上がらないと。想ってても願ってても、動かなければ何も変わらない。
―――バッ、ダダッ
『っはあっ……』
―――……
―――チュンチュンッ……
『はっ、……』
ああ、頭上は嘘みたいに穏やかだ。白い雲がゆっくりと流れて、小鳥が優雅に飛んでいく。
“空は美しいものじゃない、風は優しくなんかない”
あれは、こうゆうことなのかな……。自分だけが置いて行かれてる感覚――空が青いほど、葉の緑が鮮やかなほどズンと心が重くなる。……つらいな。きっとラルフはこの何十倍も苦しんで
―――フッ
『!』
ふと、見えている景色に違和感を覚えた。……同じだ。ここに来た時と。
“異星人は、神の孤独に引かれてこの星にやってくる”
『っ待ってよ』
いま会えなければ、もうラルフに会えない。あの願いが叶ったらこの星に引き寄せられることは二度と……
“たのしそうだなあ”
“贅沢だね、呼ばれるだけでいいのに”
“……ありがと”
会いたい、会いたい
まだ何も言えてない 何も出来てない
―――カッ
『!!待って、待って、待っ』
―――……
視界が白に覆われる直前、遠くの空に大きな鳥が見えた気がした。