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ライフ  作者: 道野ハル
帰路
154/162

焚き火



 夜。



―――パチパチッ、パチッ



 調理をするために、とってきた枝を組んで焚き火をたいた。……皆でこうやって外で食べるのも久しぶりだ。

 

「タナカ、もうちょっと枝入れろ」

『はいっ』

「おおっ、タナカ殿も慣れたものだな!」

「(もぐもぐ)」

「ラルフ、それまだ生だぞ」

『……』


 飄々と生肉を頬張るラルフ、それを見て呆れているイオリさん、と、愉快そうに笑うユラさん――そんな三人の顔をオレンジの火が明るく照らしている。

 

「おら、焼けたぞ」

『!ありがとうございます』

「俺のは?」

「お前はもう食っただろ」

「はっはっはっ!揉めるでない。仕方ない、ラルフには我が一族秘伝の草団子を」

「それいらない」

「……タナカ殿、どうだ?」

『ど、どうも(いらないけど)……』

「押しつけんな」


 ありふれた夕食の時間は、あっという間に過ぎて行った。



「タナカ殿、必ず毛布をかけて寝るのだぞ!くれぐれも腹を冷やさぬよう……」

「オカンか」

「zz……」

『はい、おやすみなさいっ』


 明日は日の出と共に出発する――迷惑を掛けないようにしっかり寝ておかないと……。三人に小さく手を振って、自分の寝床の方に早足に向かった。





―――サワッ……


―――……



 夜の風が耳元を通り過ぎていく――微かに揺れる草の音を聞きながら、そっと瞳を閉じた。


『……』


 あと、どれくらいここに居られるんだろう?一週間……?いや、もっと短いかもしれない。



“では参ろう!タナカマサ……長いな。タナカ殿でよろしいか?”


“行くぞタナカ”



 あれから三ヶ月――本当に色々なことがあった。たくさんの国に行って、様々な人に出会って、今まで感じたことのない気持ちや考えを知った。そして……



“贅沢だね、呼ばれるだけでいいのに”


“なんてカオしてんの”


“……ありがと”



 ラルフのことを、もっともっと知りたいと思うようになった。



“お前はどうなのだ?罪を感じ、罪滅ぼしのために生き続けるのか”



 ……私はラルフのことをほとんど知らない。過去に何があったのか、そしていま何を思っているのか、想像することさえ難しい。


 もっと一緒にいられたら、少しずつでも分かるようになるのかな……


『……z……zz』


 あ、ぼんやりしてきた……寝不足のうえに馬車にも乗ったんだから、そりゃすぐ眠くなるよね――今は寝よう。明日のために、ちゃんと休んでおかないと……



―――サワァッ……


―――……


―――きりっ



『(……あれ?)』


 えっ、なんだろう?なんかお腹の左側が変だ。これは……胃痛?え、なんで??こっちに来てから一度もこんなこと無かったのに。おかしいな、何か変な物でも食べ……



“我が一族秘伝の草団子を”



 !!、あれだーっ!!



―――きりりっ



『(うっ!)』


 ど、どうしよう!胃なんて滅多に痛めないから、どう対処すればいいのか分からない……。とゆうか、そもそも自分で治せるものなの?ここには大○製薬の胃腸薬もないのに……!


「……うーん……」

『!!』


 少し離れた所で寝ているユラさんが身動ぎした。……もし私が草団子でお腹を壊したって知ったら、ユラさんの事だからきっととても申し訳なく思ってしまう気がする……



―――きりきりっ



『(ううっ!)』


 ダ、ダメだ……。じっとしてようと思ったけどコレはちょっとキツイ。とりあえず離れよう。遠すぎないどこかに居よう。


 王女様からもらった布を被って、そっと寝床を離れた。


 


―――サワサワッ……



『ふう~』


 すこし歩いた小高い場所に大きな木が一本生えていたので、その幹に寄り掛かって胃痛が治まるのを待つことにした。……痛みはまだ波のように押し寄せてくるけど、さっきよりは心持ちマシになった気がする。慣れただけかもしれないけど。



―――サワァッ……



『……z……zz』


 あ、眠くなってきた。寝れるかな?このまま寝れたら幸せだな……



―――……サクッ



『zzz……』

「……」



 この夜


 夢と現を彷徨いながら


 自分の夢なのか 誰かの記憶なのか


 曖昧で


 鮮明な


 さまざまな情景をみた




 

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