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ライフ  作者: 道野ハル
オウド国Ⅳ[後篇]
151/162

朝が来た



 オウド国、宿。




―――ピチチチ……


―――チュン、チュンッ



『……』


 朝が来た。



―――ガバッ、……タッ



 布団から出て洗面台に向かう。銀色に光る水栓を大きく捻り、冷たい水を顔にぶつけた。


『ふぅっ……』


 息を吐き、蛇口を止めて目線を上げる……すると、鏡の中にうっすらと隈を浮かべた自分がいた。


『……』


 さすがの私も、昨日はあまり眠れなかった。



“俺は、最後まであいつと旅がしたい”


“タナカ殿にも、協力して欲しい”



 二人の話を聞いた後、部屋に戻ってベッドに入ったけど、イオリさん、ユラさん、そしてラルフのことを考えると、心がそわそわして落ち着かなくて、ここで何もしていない自分がとても腹立たしく感じた。


 でも、ようやく朝になった。これでやっと捜しに行ける――



“タナカは、どう思う”


“楽に死ねたほうがいい?”



―――グッ……



 あの時、ラルフはどんな気持ちで私に質問したんだろう?どんな思いでこの世界と関わって、生き続けてきたんだろう。



―――スッ、……ジーッ



 パーカーを羽織ってファスナーを上げる。やっぱりこの服が一番動きやすい――見つけるんだ。二人と一緒に、絶対にラルフを見つけ出すんだ。


『よしっ』


 息を吸い、いつもより強い力でノブを握って扉を開けた。



―――ガチャッ



「あ、おはよ」



―――バタンッ



 開けたけどしめた。


『……あれ』


 え、今の誰だっけ?ってゆうかココどこだっけ?私なんでココにいるんだっけ?あれ、分かんなくなってきたぞ。……とりあえず、もう一回あけてみよう。



―――カチャッ……



「なんなのアンタ」

『!、ぎっ』

「?」

『ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

「うるさっ」


 あれ、あれ、あれ!?



―――ダダダダッ



「タナカ殿!?」

「どうし」

『ゆゆゆゆ幽霊!!あ、幽体離脱!?』

「「「は?」」」

『変なのがここにいます!!』

「バカにしてる?」

『!!』


 あ、この感じ……この威圧感……


『ほ……ほんもの?』

「にせものとかあるの?」

『え、え、え』

「落ち着けタナカ」


 はなはだしく混乱しているとイオリさんが近づいてきて、ポン、と私の肩に手を置いた。


「本物だ」

『……え』

「今朝、ふらっと帰ってきた」

『……』


 あの日どこかに行ってしまったラルフが……捜しても全然見つからなかったラルフが……もう会えないんじゃないかと思ってたラルフが……ふらっと……帰って……


 ……


『……なっ、な、な』

「「「?」」」

『なんじゃそりゃああああああ!!』

「!!」

「タナカ殿!?」


 私は暴れた。困惑するイオリさんとユラさんを尻目に、廊下で盛大に暴れまくった。


『なんじゃそりゃ、なんじゃそりゃ、なんじゃそりゃ!!』

「おもしろ」

『ああああああ!!くそっ!!お帰り!!』

「……」

『おかえり!!』

「うん」


 馬鹿にするでも呆れるでもなく、ラルフがあははっと笑った。




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