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ライフ  作者: 道野ハル
オウド国III
121/162

胸中



 某廃村。



―――……


―――ギッ



「出るぞ」

『!』


 窓辺に座っているとローブの男がやって来た。



―――……



 外は昼下がり。太陽の光が室内にふんだんに注がれている。


「ついてこい」


 ……返事したほうがいいのかな?とりあえず腰を上げる。私が動いたのを見ると男は黙って歩き出した。



―――……タン、タン



 なんとなく距離を空けて、男の数歩後ろを歩いた。


『……』

「……」


 何か言われるんじゃないかと思ってドキドキしたけど、男は何も言わなかった。



―――サワッ


―――サワサワッ



 村だった場所を出るとひたすら森が続いていた。道のようなものはない。草がたくさん生えていて岩もゴロゴロ転がっている。ついて行くだけで必死だった。息が上がる。でも止まるわけにはいかない。止まったら何をされるか分からな……



―――ガッ



『!わっ』



―――ドサッ



『っつ……』



 気を付けてはいたけど転んでしまった。……痛い。じんじんする膝を押さえながら、私は急いで立ち上がった。


『!』

「……」


 顔を上げると――男が足を止めてこちらを見ていた。目深にかぶったフードと逆光で表情は見えないけど、何というか……待ってくれてるような気配を感じた。いや、待ってくれてるっていうのも変だけど……なぜか、感じるものは冷たさだけじゃなかった。



―――ザザッ



 走って男の近くに行く。私がきたことを確認すると、男は黙って歩き出した。



―――ザッ、ザッ、ザッ


―――ザザッ、ザザザッ



 紺藍色の背中を追いながら、ふと、この人は何を考えているのだろうと思った。



―――ザッ、ザッ



 陽の光に消えてしまいそうな後ろ姿が、やけに目に残った。

 



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