胸中
某廃村。
―――……
―――ギッ
「出るぞ」
『!』
窓辺に座っているとローブの男がやって来た。
―――……
外は昼下がり。太陽の光が室内にふんだんに注がれている。
「ついてこい」
……返事したほうがいいのかな?とりあえず腰を上げる。私が動いたのを見ると男は黙って歩き出した。
―――……タン、タン
なんとなく距離を空けて、男の数歩後ろを歩いた。
『……』
「……」
何か言われるんじゃないかと思ってドキドキしたけど、男は何も言わなかった。
―――サワッ
―――サワサワッ
村だった場所を出るとひたすら森が続いていた。道のようなものはない。草がたくさん生えていて岩もゴロゴロ転がっている。ついて行くだけで必死だった。息が上がる。でも止まるわけにはいかない。止まったら何をされるか分からな……
―――ガッ
『!わっ』
―――ドサッ
『っつ……』
気を付けてはいたけど転んでしまった。……痛い。じんじんする膝を押さえながら、私は急いで立ち上がった。
『!』
「……」
顔を上げると――男が足を止めてこちらを見ていた。目深にかぶったフードと逆光で表情は見えないけど、何というか……待ってくれてるような気配を感じた。いや、待ってくれてるっていうのも変だけど……なぜか、感じるものは冷たさだけじゃなかった。
―――ザザッ
走って男の近くに行く。私がきたことを確認すると、男は黙って歩き出した。
―――ザッ、ザッ、ザッ
―――ザザッ、ザザザッ
紺藍色の背中を追いながら、ふと、この人は何を考えているのだろうと思った。
―――ザッ、ザッ
陽の光に消えてしまいそうな後ろ姿が、やけに目に残った。