名前
「―――」
それは誰の名前だろう
「―――……」
確認するように呟かれる
「……―――」
感じる
感じたのは光
でも……
感じたのは私じゃない
「……気安く呼ぶな」
怖かった
知らなかった
知りたくなかった……
そう思ったのは
誰?
*****
真っ白。
見慣れた景色に違和感を感じた次の瞬間、視界が真っ白になった。そして気が付くと
『え』
―――ピューッ
私は落下していた。
―――ドサーッ!!
『……っ』
腰を打った。痛い……でも痛いのはそこだけだ。結構な高さから落ちた感覚があったけど、どうやら無事らしい。とりあえず立ち上がろう。まず地面に手をついて……
『うん?』
何だか変な感触がした。柔らかい?……なぜだろう。
「ねえ、おもいんだけど」
『は?』
地面から声がした。下を見ると、
『……』
「どいてくんない?」
生意気そうな金髪ヤローがいた。
【1799】
金髪に聞いた話を整理すると、ここは異星で、私はたまたま“引き寄せられて”この星にやって来たらしい。……意味が分からない。っていうかあり得ない。
「信じなくてもいいけど」
『……』
「ぼーっとしてたら死ぬかもよ」
それは一理ある。
ここが何処で、どんな人間が周りにいるのかも分からない……そんな状況で女一人でいるのは危険だ。……目の前のこいつだって何者か分からない。
『……あなたは、何をしているのですか?』
「ひまつぶし」
『はあ』
なんだそれ。金持ちの息子かなんか?
『……あの、失礼ですがお幾つで……』
「18」
『同い年じゃん』
油断するのは危険だけど……同い年か。なんとなく親近感が湧いてくる。
『暇を潰して……今、何してるの?』
「さんぽ」
『家がこの近くなの?』
「家はないよ」
『え?』
あれ……もしかしてまずいこと聞いちゃったんじゃ……。私が顔をひきつらせていると金髪はきょとんと目を丸くした。そして暫くすると楽しそうに笑って言った。
「いらないから持ってないだけだよ」
『あ……そう、なんだ』
……何でこんなに無邪気に笑うんだろう。
「旅にでるんだ」
『……へえ』
「くる?」
『え?』
「あと三ヶ月くらい」
『三ヶ月?』
「この星はあと三ヶ月くらいでおわる。アンタも元の星にかえれるよ」
『え、終わ?、かえっ?』
―――スタスタ
困惑する私を置いて金髪は歩き出した。
『!ちょ、待って、なに?なにがどうゆう??』
「かってな神のせいでねー、さいあくだよねー」
『いや、意味わかんないんだけど!』
分からないことに分からないことが重なって頭はパンク寸前だ。いや、多分もうパンクしている。……何を聞こう、何から聞こう。
『あ、あんた!名前は!?』
思い浮かんだ質問を口にする。金髪は背を向けたまま、歩みを止めずに言った。
「ラルフ」
ラルフ……
『あの、あたしはっ』
聞かれてないけど言っておく。
『あたしはサラーフ!』
―――タッ
不安も恐れも迷いもあるけど、取り敢えずラルフに付いて行こうと思った。