問い
林の入口でラルフとイオリさんと別れた私たちは、一足早く帰路についた。
―――ザッ、ザッ……ザッ
暗い街を抜けてようやく宿の前に来た時、ノベルさんが珍しく真剣な眼差しで口を開いた。
「皆さんにお話したいことがあります」
「『!』」
「ラルフくんたちの帰りを、一緒に待ってもいいですか?」
「……うむ」
私たちは三人でユラさんの部屋に入り、ラルフとイオリさんを待つことにした。
―――数分後
「……」
「……」
『……zz……!……』
「……」
「……」
『zz……!……』
「「タナカさん(殿)、」」
『ふぁいっ!?』
二人に同時に声を掛けられてハッと目が覚める。あ、この感覚久しぶりだ。授業中にウトウトして先生に呼ばれた時の感覚……
「タナカ殿、」
ドギマギしているとユラさんが微笑みながら口を開いた。
「眠っていて構わないぞ?二人が来たら声を掛けよう」
『えっ!いや、でも……』
「女の子はちゃんと睡眠とった方がいいよ。僕の腕かす?」
『え゛「武器商にんんんんっ!!」
ズバンッ!!とユラさんのチョップが私とノベルさんの間に入る。
「お主はぁぁぁぁぁ!!しょうこりもなくぅぅぅぅ!!」
「落ち着いてくださいよ」
「タナカ殿こっちだ!こっちへ避難するのだ!!」
『えっ、えっ』
腕を引っ張られ、ブン!とユラさんの後ろに投げられる。
「武器商人、お主はそこから動くな!一ミリたりとも動いてはならぬ!」
「大ゲサだな~」
「喋ってもならぬ!」
「あっはっはっ」
『……』
うん。なんか目が覚めてきた。そして、
―――ぐぅ~
『……』
「「……」」
目が覚めたらお腹空いてきた……。
『……あ、あの、部屋から食べ物とってきていいですか……』
恥ずかしい。イケメン二人にダイレクトにお腹の音を聞かれるなんて、めっちゃ恥ずかしい。私は返事も聞かずにそそくさとドアへ向かった。
「あ、タナカ殿!食料ならここにも……」
『大丈夫ですっ!とってきますっ!!』
―――バタンッ!
『ふぅ~っ』
何とか切り抜けた……。いやもうアウトだけど。
―――タン……タン……
二つ先にある自分の部屋に向かう。月明かりしか入らない廊下は暗かった。躓かないように気を付けないと……。
―――……タン
無事に扉の前に着いた。冷たいドアノブをぐるりと回す。
―――ガチャッ
たしか鞄はベッドの上に置いてあるはずだ。入口にあるランプを点けて念のためドアを閉める。振り返ってベッドの方に歩き出そうとしたその時
窓に映る、知らない誰かと目が合った。
―――グイッ
―――ガッ
「声を出すな」
一瞬だった。後ろから手を引かれて身体が揺らいだと思ったら――腰と首に手を回されて完全に動けなくなっていた。
「大人しくしていろ。騒げば命はない」
『……っ』
冷たい何かが首に当たる。恐い。恐い。恐い。恐い。
「一つだけ答えろ」
『……』
「お前は異星からきたのか」
『!!』
「答えろ」
『は……い……』
――――トンッ
『!……』
頭の後ろに衝撃がきた。意識が遠のく。
目の前が真っ暗になった。