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切去
―――……
長く、暗い廊下。
男達はここである人物を待っていた。
―――コツ、コツ
廊下の先から無機質な足音が近付いて来る。
―――コツ
「待たせたな」
「いえ」
二人は頷き合うと、目の前の人物に告げた。
「先ほど火薬職人の元へ行ったのですが、怪しい者と遭遇しました」
「ほう」
「異国の服を纏った男二人と、女一人」
「……」
「その者達は火薬職人に接触し、火薬の製造方法を聞き出そうとしておりました」
「金髪の少年は居なかったか」
「そのような者はおりませんでした」
「そうか」
男が目を伏せる。
―――……スッ
彼は静かに瞼を上げると何も映さない黒い瞳を二人に向けた。
「今夜、職人に眠りを」
二人は黙って頷くと男に背を向けて歩き出した。
―――コツッ
男もまた、闇の中に戻っていった。