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記憶
西の森。
―――サクッ
太陽が真上から下り始めた頃、少年はその場所に足を踏み入れた。明るい陽射し、風に揺れる草花、そして……大きな岩。人々が願いの書と呼ぶものだ。
―――サクッ、サクッ……サクッ
岩に近付いて、一度足を止める。
―――……サクッ、サクッ、サクッ
再び歩き出し、その周りをぐるりと回った。
―――スッ
ある地点で踵を上げ、土を踏む。少し場所を変えて同じことを繰り返す。
―――トン、トン
―――トン、トン
―――トン……タン
音が変わった場所を足で掘る。暫く掘ると銀色の鉄板が現れた。
「……バカだなあ」
―――サァァァ
ぽつりと呟かれた言葉は風の音に消えた。金色の髪を僅かに揺らして、少年は空を仰いだ。