かつての仲間たち
「冬矢くんは確か星ヶ海に行ってたよね。確か可愛い女の子ってがいっぱいいるからだっけ?」
「なん、だとっ!? 冬矢! なぜ俺も呼ばない!」
「そうだな。みんな可愛くて目の保養だ」
「しかもあそこ坂道だからパンチラみたい放題だし、JK好きの冬矢くんには垂涎ものだね! 博臣、残念」
「なんだってー!! よし、今から転入手続きを……」
「って、なんで柚は俺を変態にしたがるんだよ」
このやりとり、久々だな。
柚の冗談は他の人に聞かれたら本当にヤバい。
「え? 博臣と同じで変態かと思ってた」
「おいおい。ったく相変わらずだな」
こういう話を出来る友人は本当にありがたいな。
俺はつくづくそう思う。
「はは、まったくだな。んで、冬矢、お前はそっちで何するんだ? お前ほどのセンスがあって野球しないのなんて」
「そうだよ! 冬矢くん! なんで野球やらないの! ウチに転校しておいでよ。また3人でしようよ」
「そうだぜ、鳴凌のみんなはいろんな高校に行った。大体どこも全国上位に入るチームだ。もちろん、俺らが居る姫森もだ」
「監督には私たちからも言うから! それともやっぱりまだ野球への情熱はなくなってるの?」
みんなは俺が野球をやらなくなった理由を知っている。
もちろん、家庭の事情もそうだが、一番大事なことがあれから感じなかったから。
でも、みんなと出会ってまた楽しめそうだと俺は思った。
コイツらには言っておかないと。
「誘ってくれてありがとう。けど、そっちではしないよ。俺は星ヶ海で野球をすることにした」
「「えっ!!!!?」」
さすが双子。
声が揃った。
「冬矢くん、そっちで野球するの!? 確かそこ野球部ないよね?」
「ああ、一緒にやろうって言ってくれてる人が野球部、最初から作るんだってさ。最初からしていくって初めてだよ」
「はっ、そうか。野球部作るのか。だったらいつか戦えるな。冬矢と一緒に野球出来ないのは寂しいけど、戦えるならそれもありだな」
「まだまだ弱いチームだなら姫森みたいな強豪と当たるのはだいぶ先かもだけどな」
博臣も柚葉も喜んでくれた。
本当にありがたい。
「みんな、喜ぶよ! やっぱりみんな気にしてたし。せっかくだしみんなに言って……」
「柚、せっかくだし黙っといてくれないか? どうせなら驚かせたいし、せっかくなら油断してもらおうと」
「ふふっ、それなら黙っておいてあげるよ。みんなの驚く顔見てみたいなー!」
それから話は結構盛り上がった。
時間もあっという間にすぎる。
「おっと、もうこんな時間か。これから自主トレしてくるわ」
「すまんな、時間取らせて」
「気にすんな。冬矢、上がってこいよ。公式戦でやろうぜ」
「勝負待ってるよー!」
「2人相手は大変だな」
「ははっ、じゃあな」
そうして電話が切れた。
久々に話した友人達は嬉しそうにしてくれた。
だいぶ心配させてたんだな。
さて、明日から練習だし、軽く素振りでもしてくるか。
いつか、仲間たちと戦える日を待ち望んで。
選手名鑑
中村柚葉
姫森学院1年生
左翼手
明るい女の子。オレンジのボブカットがポイント
元鳴凌中レギュラー
詳細はまた後日。
中村博臣
姫森学院1年生
中堅手
柚葉の双子の兄妹。仲良し
鳴凌中のレギュラー