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グラウンドでの邂逅

 なんともまぁ元気そうな女の子だ。

 あっという間に溶け込んだ。

 ものの数分もあったかどうか。

 そしていま、4人で校内を散策してる。

 なかなか広めの学校だ。


「へぇー、てっきり3人は知り合い同士だと思ったよ」


「智花ちゃんと同じだよー! たまたま冬矢くんと話しててそこに響が来てって感じ」


「唄はコミュニケーション上手なんだね!」


 いや、十分智花も凄いかと思う。


「2人ともあっという間に馴染んだわね、流石は唄」


「たしかにね、まぁ面白い1年になりそうだね」


 俺と響は前の2人を見ながらそう思った。

 こうして気軽に話してくれるし、いいもんだ。

 ある意味これハーレムなような。


「わぁぁ! 朝思ってたけどグラウンド広い」


「確かに広いな、運動部も活発そうだ。ってあれ? あそこって?」


「野球のグラウンドだよね!? あれ? 部活ってここなかったよね?」


「3年くらい前まではあったのよ。今は人数居なくて廃部寸前だから使ってる人はいないよー! って智花ちゃん野球に興味あるの!?」


「えへへ、実はここで野球部作りたくて来たんだぁ! 一から作るのってがしたくて!」


 その時、ピコンと唄のアホ毛っぽいの動いた。

 ような気がした。


「じゃあ私たちで作ろうよ! 私も野球したいなーって思ってるんだ! 選手としてではなくマネージャーとか戦略面でしたかったから私も作ろうと思ってた!!」


「唄、よかったじゃない。夢が叶えられて」


「響も参加だよ? 決まり!」


「私に拒否権ないのね。」


 とほほ、としてる響。

 ドンマイと俺は思った。

 するとそこで何故か智花にジッと見られていた。


「ど、どうしたの?」


「冬矢もやろうよ! 混合野球部で! せっかくだし!」


「え、いや、俺は……」


 この学校では野球やるつもりなかった。

 適当に個人のスポーツでもしようかと思っていたから。


「冬矢くんなら出来そうだけど、ってあれ? 御凪………?」


「あら? あそこに誰かいるわね」


 智花が何かいいそうだったけど、響の声で意識はそっちに向いた。

 確かに誰かグラウンドを見てる。


「あなたも野球に興味が?」


 流石は唄。

 いきなり話しにいった。

 声をかけられた黒髪のボブカット。

 可愛いよりはクール?いや美人の部類か。


「えぇ、そうなのだけどどうやら野球ないみたいなの。ちゃんと調べたらよかった」


「だったらみんなで一緒に作らない!?」


「え? いいの?」


「うん♪ 智花ちゃんが作るって言い始めてから始まったからまだ申請してないんだけど」


「是非お願いしたいわ。私は鈴本結奈(すずもと ゆな)よ、宜しく」


「ん? 鈴本、結奈、ちゃん? ねぇ、もしかして大亀中学?」


「え、そ、そうだけど?」


「やっぱり!! 大亀の正捕手の!! 夏の大会予選ではベストナインに入ってる!」


 それはすごい。

 よほど優秀なんだろうな。


「い、いやたまたまよ。よろしくね。みんな、メンバーなの?」


「いや、俺はまだちが……」


「あ、ずっと気になってたんだけど、もしかして冬矢くん! 鳴凌中学出身じゃない!?」


 突然智花が大きな声を出した。

 みんな少しびっくりしている。


「……そうだよ。よくわかったね」


「同姓同名かと思ってたんだけど、やっぱり…」


「え? 冬矢ってなんか有名なところ出身?」


「鳴凌の御凪冬矢、あ、ほんとうにそうだったのー!? 響、有名も何も……」


「鳴凌中学野球部は昨年の全国優勝校で、その御凪冬矢っていうなら世代最強遊撃手、エリアNo.6とまで言われてる選手よ。私も試合見てたから覚えてる」


「結奈、詳しいわね」


 一気に場が盛り上がってしまった。

 響はついてこれてないが。

 ぶっちゃけそんな簡単にバレるとは思わなかった。


「決勝のホームランは語り継がれてるけど、私はやっぱり凄いのはあの守備力! なんで冬矢くんが野球部のない学校に!?」


 そのことに興味津々の皆さんだ。

 言い逃れ出来なさそうだ。


「一番は学費の面だな。スポーツ特待ならクリアだろうけど、個人競技ではないと中々受けれなくてね。下の妹たちのことも考えると他の学校よりはここの学校のほうが学費補助があるし、何かで活躍したら免除もあるからね。だからこそって感じかな」


「そうだったんだ……。だったら、私たちとここで野球をしない!?」


「お遊びでの野球はやれないよ。つい本気になってしまう。それともやるからには努力する覚悟あるの?」


「……私はね、中学校じゃピッチャーしてたんだけど、2年生で1番貰ったんだ」


「? 凄いな」


「でもね、下級生が一桁貰うってのは大変なんだよ。特に女の子が多いとね。嫌がらせとか沢山酷いこと言われたりね」


 俺にはそう言う気持ちは分からない。

 前のチームは知ってる限りではそういうことはなかった。


「だから野球辞めたいって思ったけど、ある人のプレーや野球を見て、またしたいって思った。最初から部を作って。だから、私は生半可ではやってない」


「智花ちゃん」「「智花……」」


「なるほど、それは失礼なことを言ったね。けど、俺は」


「だから私と勝負して、冬矢くん。それからでも判断は遅くないよ」


「……わかった。一打席勝負だ。ヒット性のあたりなら俺の勝ち、それ以外はそっちの勝ち。四球はノーカウント」


「うん、それでいい。結奈ちゃん、キャッチャーお願いできる?」


「わかったわ」


 こうして智花と俺の一打席勝負が。

 始まった。

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