巡り会った仲間たち
「おーい。着いたぞー!」子供が手を振った。言われて見ると二人の子供が手を振り返していた。
焚き火をして石が積んであるとこに鍋を置き何か作っている。
森から抜けたようで木の生え方や種類が変わり背の低いタイプの木の近くに草と土が見えて拓けた所が辺りに続いていた。
「アル、コイツが取った奴だけどこれ頼む。」俺を目線で示して担いでいた木の枝から兎擬きを赤茶の髪の長い子に渡したのを見て思った。コッチの子がアルという名前か。
よし、覚えた。アルより頭一つ分大きな子でもう一人の茶色の髪の子に薬草の入った布の包みを渡して
「レオ、これ見てくんない。あっコイツが採ったのも確認してやってよ。さっき俺と採って来たから間違ってたら悪いしな。」と俺の持って来た薬草の包みを指差した。茶色の髪の子がレオか。覚えておこう。さっきのアルと同じように髪の色と名前を心の中で繰り返して覚えた。
「レオは俺より薬草にずっと詳しいから変なのまじってないか見て貰おう。俺だけだと薬草に自信ないからな。」と俺の方を見て言ったので俺は自分の布包みも渡してお願いする事にした。
「ではお願いします。」と俺は2人に声を掛けた。2人は俺の方を見ながら荷物を受け取ってちらっと俺を見てから連れて来た子供に言った。
「又、無茶したの。」「どういうことか後で説明だよ。」と言って少し離れた所に移動した。そのまま俺から見えない場所に行ったようだ。
「俺らは火の番と枝で串作ろうかなぁ。」子供のナイフで木の枝から枝を切り、火を絶やさぬように近くに集めてあった枯れ枝を足したり子供の指示の元に動いていった。
作業を終えたレオとアルがが戻って来た。ここでの続きの作業を無言で進めていった。
鍋の汁の中に兎擬きの肉を入れて蓋をして、串に刺して火に炙るように並べていく。俺も肉を串に刺す時や何かの粉をまぶしていくのは手伝った。
レオが分けた薬草からいくつか鍋の中に入れた。
「よし、食べる前に説明だよ。しっかり話してくれよ。」俺をここに連れて来た子供に向かっ てレオが言った。
アルも何か思うところがあるらしく作業が終わって手を休めて、向き直り
「お兄ちゃんはいつもいい加減なの。そして無茶してくるの。拾いグセも有るし、今日ぐらいは納得する説明して欲しいの。」強い口調で次々と2人から何か言われて責められていた。俺の所為で叱られてる?
拾いグセって俺の事か。俺は猫か犬か!ついて来たのがよくなかったのかもしれない。慌ててマズイんじゃないかと焦った俺は2人に、
「俺がついて来たのダメだったよね。俺は戻るからコイツを怒らないでやってくれ。俺はもう行くから。」と言って立ち上がり急いで走って逃げた。
「待て、お前の荷物を置いてどこに行くんだよ。」そう言ってレオが追いかけて来たが、俺は無視して走った。だがレオの方がはしるのが早くて周り込まれて捕まった。
「お前は悪くないよ。気が付かなくてすまなかったよ。アルトの事では迷惑をかけたよ。すまない。」と優しく言ってくれた。
「いつもアイツには勝手にどこかに行かないように約束してたんだよ。又、約束を破ったんだよ。森の深い所にある薬草が混じってたから説明が欲しかっただけだよ。薬草が余分に欲しい理由もわかっているんだよ。僕達の住んでる孤児院の為だよ。僕はお前の物を取る気は無いよ。安心して戻って肉を食べてくれよ。」格好悪く捕まった俺はレオに腕を掴まれたまま消沈した気分で元の場所に戻った。
「お兄ちゃんのせいで悪くない人が気にして逃げちゃうとこだったじゃないの。お肉を捕った人に迷惑かけてダメじゃないの。この人抜きで美味しくお肉が食べれないんじゃないの。ちゃんと説明してくれないの。」とアルが言ってたので俺も安心してここに残り肉を食べることにした。その時にはレオも腕を離してくれていた。
「なんで逃げるんだ。お前が居ないと俺だけ悪もんじゃないか。」と何故か拗ねたように俺を連れて来た子供は俺に言った。
レオは、呆れたように大きな声で言った。
「アルトは悪もんでいいよ。薬草採りを手伝ったコイツのどこが悪いんだよ。アルトの仕事を手伝ったのが悪い事なのか。僕は次からアルトの仕事を手伝ったりしないぞ。」
「お兄ちゃんは反省して謝るの。約束を破ったのはお兄ちゃんなの。どうして森の深い所に行ったのか話して欲しいの。」アルは焦げないように串肉の向きを変えながら言った。
2人は採取した荷物で森の深い所から戻って来たことに気付いていたらしく約束を破った事や危険だった事を察していたようだが、俺を連れて来た子供はバレている事に気付いてなかったようだった。
「まずは お兄ちゃんの事ありがとうなの。どこでお兄ちゃんと出会ったの。あなたはどこから来たの。名前とか教えて欲しいの。」アルから聞かれるまで俺はお互いに名乗っていなかった事に気が付いた。
俺は、連れて来てくれた子を指差しながら言った。
「この子とお互いに名前を言ってなかった。ここより木が密集してる所で出会った。俺の名前は。」と言ってからハッとした。あれ、俺の名前が思い出せない。考えたが名前が出てこない。どこから来たかも改めて考えたみたが思い出せなかった。
「名前が思い出せない。 わからない。俺はここがどこかわからない。どこから来たのかも思い出せない。」俺はうなだれて両手で頭を抱えて火だけを見ていた。アルとレオが
「あなたも大変みたいだけど、食べてお話して働いて過ごして、それから焦らずに思い出していけば大丈夫だと思うの。」
「そいういう話聞いた事あるよ。大丈夫だよ。出来る事をして働こうよ。僕らのいる孤児院に責任者の先生に話して頼めばきっとしばらくの間は住めると思うよ。町に一緒に行こうよ。アルトが世話になったから僕らで出来るだけのことは手伝うから安心しろよ。」とゆっくりと諭すように真剣な目で言った。
「大丈夫か。お前の今後についても俺も考えるよ。」とアルトも言ってくれた。アルも頷いていた。みんなで一緒に孤児院で暮らそう。孤児院で住みギルドでレオ達と採取をして稼げば暮らしていける。孤児院で学べるのでいつか独り立ちできるようになればいいという事になった。話をしてたらお腹が空いた。焼けた肉と鍋の汁を分けてそれぞれが持ってきていたパンを食べだした。今までに食べたことのない肉の味 が美味しく感じた。なんだか何かで胸の中が少し暖かく感じた。