はじまり
目を開けたら何故か俺は外で寝ていた。
土の上に寝ていたらしく服や手は土で汚れていた。
上を見ると木の枝が広がり、葉の間から青い空が解る。
暖かい日射しが感じられる静か過ぎる時間の中に俺はいた。周りを見渡したが誰も居ないようで 俺は一人でこの場所に居るのかもしれない。
静かな木の葉が揺れる音を聞いていた。
ゆっくりとした時間を感じながら身体には痛みを感じていないので身体を起こして静かに立ち上がった。
クラっと少し目眩がした。寝てる時は違和感を感じなかったが体が重く怠いようだった。
近くの木にもたれながら手で服の土を払い考えた。ここがどこか解らない。
俺が何故ここに居るのか思い付かない。どうやってここに来たのかも思い出せない。俺は一生懸命に考えた。
今日は何月何日だろう?いつ何だろう?
何曜日だっただろうか?仕事はどうしたのだろうか?
俺は、直前まで何をしていたのだろうか?思い出せない。
自分の事なのだがわからないなりに考えたが考えてもよくわからなかった。
時間が経ったせいか怠さも薄れて体が楽になったようだ。
今、思い出せる範囲でわかるのは俺は49歳の日本人で会社員だった事とイベントの企画を立ち上げる部署で今回は同期の同僚が作った企画書が通ったからかなり力を入れてた。社内用と企業向けのイベントを企画するメンバーにと言われていた。来週のプレゼンに向けて会議の準備を手伝っていた。
社内ではメンバー内での軽い打ち合わせをしていた。
社内用にもセミナーをいくつか開催してプレゼン対策イベントの説明用の資料を作っていたし、企業の方用に会議室やお茶の手配もしていた。
イベント用の商品と社内研修用のサンプル等を用意する為に俺はよく車で日中は社外に出掛けていた。
夕方から資料をまとめて朝打ち合わせの時に資料の説明と進行具合の確認をしてから今日もいつものように打ち合わせ後に外へ準備の為に出かけていた。
図書館で資料用の本を借りてから、それからどうしたのだろう?
いくら考えてもその後の事を思い出せない。
仕事中だったからスーツを着ていた筈なのに、今の服装はシャツとズボンに靴でカジュアルなもので生地も薄い服になっていた。
全体的に地味で色もベージュみたいな茶だった。
荷物は肩からかけられる鞄が1個あるだけで他は何も持ってなかった。
中学生の頃の通学用のバッグのようだった。これによく似た鞄の中にお弁当と水筒にお茶入れてタオルや着替えを持って学校に行って部活してたよなって思いながらよく見るとベージュぽい白の鞄の上部分から布地の蓋がペロンと付いて鞄の下部分に皮のベルトみたいなのを使って止めるのも同じだなぁって呑気に思っていた。
考えてもわからない。なるようにしかならない。ケセラセラ…。
できる範囲で先に出来る事をしよう。とりあえず俺は鞄の中身を確認してみることにした 。
タオルサイズの少し厚めの布地が5枚と昔おじいちゃんがくれた懐かしい竹筒の水筒が2個も入っている。少し固い感じの黒パンが5個と木で作られたスプーンとフォークにお椀が布に包まれている。
小ぶりの林檎が小袋に入っているのも有った。着替え用のシャツとズボン等が入ってる袋と小さいすり鉢とすりこぎ等の小道具が入った小物用の袋という感じに簡単ながら仕分けて鞄に色々見憶えの無い物も入ってた。何に使うんだ。
「なんでこんな鞄を持っているんだ。」
と俺は自分にツッコミを入れて驚いていた。
「いろんな事がよく解らない。」声に出して言っていたのに更にびっくりした。正直なところそんな落ち着かない気持ちだけに今、俺の周りで涼しいそよ風が吹いて近くの木の枝が揺れているこの状態があり得ない。見ているだけでなんだかゆっくりと和んでしまっている俺は、「もしかしたらここは森林公園に似てる。」とのんびりと考えた。思い付いたままに現状を受け入れられずに周りを見ていた。周りの木が見渡せる範囲にずっと生えていて下生えの草や落ち葉がまだらに落ちた土等を一つ一つ確認するように観ていた。これだけ大きな幹の木下に生えてる草がある様子からよく肥えた土なんだなあと思った。木の枝の間から見える空には何もなくてただ蒼い空が続いていて鳥の声とかもなく今は、静かに周りを眺めるだけだった。
ガサガサと草が揺れて薄い茶色の兎みたいな動物で普通より一回りぐらいは大きな兎が俺の方に向かって飛び出してきた。
まっすぐに向かってくる兎擬きには不思議なことに頭に角が生えていた。
あぶねー。角が刺さったらあれはヤバイ。と俺は急いで兎をとっさに避けた。
なんとか条件反射のお陰でギリギリで避けれた。ギリギリで避けたおかげで兎擬きはそのまま俺の後ろの木に自分の勢いでぶつかりに行き、ぶつかっただけでなくさらに上手い事に角が木の幹に刺さりというか挟まってジタバタと動き唸り声を出し俺を睨みながら逃げ出せずにもがいていた。
兎擬きをよく見ると口の周りは乾いた血のような茶色だし口から牙みたいなのも有るし草食じゃなくて肉食の兎なんてヤバイ奴かもと焦った。このままだとそのうち幹から自由になり俺を襲ってくるかもしれないと考えて近くに何か無いかとキョロキョロと下を見ると俺は数歩歩いた所に木の枝が目に入った。
兎擬きを見張りながらそっと移動して木の枝を拾い邪魔な枝や葉っぱを手で取れるだけ引っ張って無理やり取って棒のようにしたらそのまま急いで兎擬きに向かい頭や首辺りを何回も何回も叩いた。怖いと思ったのとやらないとやられるという思いでひたすら叩きまくった。
どれぐらい叩いたかわからない。兎擬きがぐったりして動きを止めていたのに気づかずに何回も叩いていた事に気づいて俺は手を止めた。
唸り声をあげてジタバタと動きうるさかったのが今は、とりあえず兎擬きは静かに動かなくなっていた。意外と血は飛び散らずに首周りの傷から下の土に流れ垂れてい続けている だけだった。俺はペタリと座り込んでしまった。やっと一安心だと感じたら腰が抜けたというか変に力を入れていた分が抜けたというか安堵感かと思う。
「はあっ〜。」気の抜けた変な声まで出たよ。喰われなくて良かった。
さて、俺はこれからどうしよう。とりあえずはここで暮らすのか?
大丈夫なのか?
意外と大きな兎擬きはこのままでいいのか。ここ危ないんじゃないのか。
はじめまして岩城です(*´ω`*)
読んでくださりありがとうございます♪
家族でほのぼのやっていきますので、どうぞよろしくお願いします(^^)/~~
他にも書いている作品があるので、そちらもぜひ!(宣伝)