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感じるおかしさ

「人間の数倍、か」

「ええ。鉄の鎧ごとペシャンコにされる程の力よ。それを想定したうえで、この馬車を見れば……」

「粉砕、だな」


 強い力で叩き潰されたのであろう馬車。こんなものは、盗賊では有り得ないだろう。

 となれば、人間以外の何か強力な力を持ったモノの仕業であることは明白だ。

 サーリアの言う通り、オークであると考えるのが自然で……そうなれば、街が門を閉じていたのもオークを警戒してのことだと理解できる。


「オークでほぼ間違いないわ。此処に居ないってことは、何処かに移動したんでしょうけど……」

「何処か、か」

「ええ。王都に向かったんなら迎撃されてるでしょうし、街の方に向かったならやっぱり迎撃戦になってると思う。つまり、街道を進むチャンスね」


 元々街道を外れるのは、あまり良い事ではない。

 定期的に騎士団が掃討を行う街道は、街道を外れた場所よりも多少ではあるが安全性が高いためだ。

 故に、オークが何処かに行ったというのであれば街道を進むのが常識。

 しかし、カノンは馬車を見て、周囲を見回し……ふと、首を傾げてしまう。


「だが……本当にオークなのか?」

「どういうこと?」

「いや。この残骸……何かおかしくないか?」

「何処がよ?」

「何処がっていうか……そうだなあ」


 そう、カノンはこの馬車の残骸に違和感を感じていた。

 オークの集団がこの馬車を襲撃して叩き潰した。それはとても正しい事に思える。

 思えるが……そうだとすると、何かが足りないように感じたのだ。

 それは何か。考えて……カノンは「あっ」と声をあげる。


「死体がない。死体は何処に消えたんだ?」

「何処って、街に運ばれたんでしょ? 当然じゃない」

「馬の死骸もか?」


 そう、馬車の残骸はあっても死体はない。

 人の死体は街に運ばれて埋葬されたと考えてもいい。だが、馬の死骸も?


「それは……放っておけば別のモンスターを呼び寄せるかもしれないし」

「……なら、この馬車には足りないものがあると思う」

「足りないものって? 荷物とかならやっぱり運ばれたと思うけど」

「そうじゃない。見てくれ……血が、何処にもついてない」

「あっ」


 そう、この馬車の残骸には、血の跡が何処にもなかった。

 たとえば馬車に乗っていた人々が馬車と一緒に粉砕されたというのであれば当然、その痕跡が残っていてしかるべきだ。

 だが、それがどこにもない。これはどういうことなのだろうか?


「何か、おかしいぞ……今すぐ此処を離れたほうがいい気がする」

「そ、そうね。確かに、何か」


 おかしいわ、とサーリアが言いかけたその瞬間。地面が僅かに揺れて。


「危ない!」

「きゃっ⁉」


 カノンがサーリアを抱え、その場を強化のかかったままのスピードで走り抜ける。

 その直後。地面から伸びた街道と同じ材質の巨大な「手」が、何もない中空を握りつぶしていた。

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