湯煙ルーチンワーク
透明の湯が
穏やか日々を撫でる
身体を中へ浸す時
雲の感触であるかのように
纏い包み
隙間を埋めて行く
開くような気もするが
だからこそ
閉じている場所が
明確になる
浮かんでしまう物がある
考えないと考える
逃げられない場所なのか
逃げ込んだから見える物なのか
ベルトが締まる
飲みの席から帰る道で
二個、穴を緩める
冷たい風のベルトが出来た
酒の温かさで気にも止めず
朝、起きたなら風邪を引く
経験から分かるからか
五歩、歩いた所で
元に戻した
冷静な判断は
未来を温かくするのだろう
冷たいのは
その判断を想いのまま
突っ込んだ後である
明らかに
無くなる物があるのだ
10キロの鉄アレイで
リハビリをする七十代の親戚は
一人で全てを掴んだ人だ
使うべき所で金を使いながら
労を惜しまず
倒れながらも働いた
中学しか出ていないから
全てが自分へ返ってくることを
知っているのだ
長い社会人生活の賜物である
生きるとは
返ってくることも
考えなくてはならない
独りにならない方法は
知って通りだ
夢を呟き歩き
同時に
潰して歩く
下手な人間の歩き方だ
今まで
環境が無かった訳でもなく
だからこそ
何もしなかった吹出物
犯罪者には怖くてなれず
良い人を装っても伝わらない
立ち上がり
歩き始めれば
三歩目で蹴つまずいて
座り込んで明後日を見る
立ち上がった理由を
忘れているのだ
無難な馬鹿を持ち
突き抜けることに臆病で
目にも入らない
人間の形だけが
存在意義みたいで
数にだけ含まれている
あんたさ
そろそろ、何か言った方が良いよ
それの何が駄目なんだと
言ってしまうのなら
全てを肯定しているんだから
相手の言っていることも
肯定していることになる
それは違うんだと
言ってしまうのなら
全てを否定しているんだから
自分のやってきたことも
否定していることになる
否定と肯定だけで見ているのなら
何も言えない
そんな形が残るのだろう
だから、駄目だったんじゃないか
なんて考えないのだろうか
どちらかを選ぶことも
どちらも選ばないことも
否定も肯定も
何一つ、背負えていないからだ
その重たさから
逃げ出したら
逃げ込んだ先にも
感染していくのだ
ただの発生源になっている
空気感染する分
インフルエンザより
悪いかもしれない
歩いている時だけ
その重さを感じたら良い
疲れたら
荷物をおろして
座って休めば良い
寝っ転がって良いのだ
それくらいのことは
誰でも理解できる
単純な話だからさ
荷物を持って歩いている人が
永遠に歩けるかと問えばいい
そのタイミングは
当人にしか決められないと
言い切ればいい
持って歩いている時に
気遣いは要らないと
訴えればいい
シャワーを回した
物語を作った後
現実世界に帰ってきた
シャンプーヘッドを押し
泡立てる
桃の香りがする
気にくわない
失敗シャンプーだった
洗顔石鹸は
チューブの中身が
結構、減っていた
買いに行かないといけない
脳裏に上書きされたから
さっきの物語は消えた
湯気と冬の冷たさ
冬の冷たさだけが残る