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05 第一番所 その4

「さて、サンゾー殿にもあれを渡しておかねばなりませんな」


 スボ和尚はそう言うと、立ち上がって奥へと引っ込んだ。

 そして、手に巻物のようなものと願いの玉を持って戻ってくる。


「こちらの巻物が、ほこらの地図です。過去にオヘンロ・クエストに挑戦をした方から聞き取った、ほこらの場所が書かれております」


 そう言われて渡された巻物にサンゾーは目を通す。シコーク大陸の全図の上に、点々とほこらの場所が書かれている。


「あくまで聞き取りによるものですので、実際にそこにあるかは行ってみないと分かりません。しかし、各ほこらに彫られている次のほこらの方角と距離を合わせて考えれば、おおよその目安にはなると思われます」

「はい! 貴重なものをありがとうございます!」

「いやいや、これもリョウゼンの役目ですからな。

 そして、こちらが……」

「準備、終わりましたッス!」

 と、そこに、出て行ったときと同じ勢いでゴークが戻ってきた。先ほどとは違い、肩には装飾の付いた棒を担いでいる。



「お待たせしましたッス! 師匠、和尚から地図は受け取りましたッスか!?」

「……ゴーク。おぬし、もう少し落ち着きを持てとあれほど……」

「はいッス!」

「……もうええわい。

 ゴーク。今こそおぬしにこれを返そう。おぬしがここに来た際に預かっていた願いの玉じゃ」

「はいッス! ありがとうございます、和尚!」


 ゴークは両手でスボ和尚から願いの玉を受け取ろうとして、……逆にスボ和尚に両手を掴まれた。



「和尚?」

「ゴーク。おぬしは旅立つことになったが、儂から見ればまだ未熟。その点を忘れず、これからも精進していくように。

 そしてくれぐれも、道中サンゾー殿に迷惑をかけぬように。良いな、ゴーク」


 強い瞳でスボ和尚はゴークを見つめる。

 ゴークは最初目を逸らそうとしたが、思いとどまったのか、まっすぐにスボ和尚を見つめ返した。


「……分かりました。これまでお世話になりました、和尚!」

「うむ。頑張れよ、ゴーク!」

「はいッス!」



 スボ和尚はゴークの手を離すと、次にサンゾーの手を取った。


「サンゾー殿。未熟な弟子なれど、ゴークの力はあなたの助けになるはずです。

 ゴークのことをよろしくお願い致します」


 スボ和尚はそのがっしりとした両手でサンゾーの手を強く握り、サンゾーを見つめた。

 サンゾーもその瞳を見つめ返す。


「……はい、和尚様。ゴークのこと、確かにお預かり致します」



 スボ和尚はその答えに満足したように頷き、サンゾーの手を離した。


「お二方の旅路が良いものでありますように。(みや)の神のご加護がありますように。

 遠い空ながら、お祈りしております」

「ありがとうございます。行って参ります!」

「行ってくるッスよ、和尚!」


 そうしてサンゾーとゴークの2人は、本堂を出たのであった。




「お師匠! 忘れずに第一のほこらに寄って行きましょう!」

「あ、そうだね、忘れるところだった。さっき立ち合ってそのままだもんね」


 サンゾーとゴークは、寺の奥にある第一のほこらの前まで歩き出す。

 その道すがら、サンゾーは先程から気になっていたことをゴークに尋ねてみることにした。ゴークが部屋から戻ってきた時に担いでいた、装飾の付いた棒。


「そういえばゴーク、その棒は何?」

「これッスか? これはニョイ=ボーと言いまして、和尚から頂いた武器ッス。

 さっきの立ち合いの時もこいつがあれば、もう少しマシに戦えたと思うッスよ」

「へぇ、言うじゃない。……ちょっと持ってみてもいい?」

「いいッスよ!」


 ゴークはサンゾーにニョイ=ボーを渡そうとする。ゴークが軽そうに持っているので、サンゾーはそれほどの重さは無いと思っていたのだが……。


「ええっ!? 重っ!?」


 予想に反して、ニョイ=ボーはずしりと来る重さがあった。

 取り落とすほどではないが、片手で軽々と持てる重さではない。


「もしかしてゴーク、かなりの力持ち?」

「いやいや、違うッスよ。これには仕掛けがありまして……」


 そう言いながら、ゴークはひょい、とサンゾーからニョイ=ボーを受け取り、両端にある金属部分を指差す。


「ここに軽量化の術式が組み込んでありまして。オレっちが持っている限り、オレっちは重さを感じないんス」

「へぇー。すごいのね」

「でも、実は一つだけ欠点がありまして……」

「?」

「これ、オレっちが()()持っていないと軽くならないんスよね。なので、背負ったりはできないんス」

「ふーん……。あ、逆にそれならさ」


 サンゾーは、良いことを思いついたと言わんばかりにポン、と手を打って、


「旅の間、それを背負ってれば鍛錬になるんじゃない?」

「ええー!? 無理ッスよ、潰れちゃいますよ!」

「無理かなぁ? まぁ、強制はしないけど……」

「うーん……。考えておくッス」



 そんなことを話している間に、2人は第一のほこらの前まで来た。


「ではお師匠。願いの玉をほこらの中に入れて下さいッス」

「こう……かな?」


 サンゾーは願いの玉を取り出すと、コロン、とほこらの中に入れた。

 するとほこらの中で願いの玉が眩しく輝き出す。


「うわっ、まぶしっ!」

「そうなんスよ。結構眩しく光るんスよね。一度光ったら取り出して大丈夫ッスよ」


 サンゾーはほこらの中から願いの玉を取り出す。すると光は収まり、元の白い色に戻る。


「不思議だねぇ……」

「願いの玉は神様が作ったとも言われているッスからね。さてオレっちも……」


 コロン、ピカーッ!


「オッケーッス!」

「よし、それじゃ行こう!」


 サンゾーとゴークは山門を出て、街道を歩き出した。




 山門を出て100mほど歩いたところで、ふとゴークが後ろを振り返った。

 そのまま立ち止まる。


(……ん? どうしたのかな?)

 サンゾーも立ち止まって振り返ると、山門のところに和尚様が立っている。

(あ、見送りに出てくれてたのか)


 そしてゴークはリョウゼンに向かって正面から立つと、深く深く頭を下げた。


(……こういうとこ、何気に真面目だよね)

 サンゾーもゴークに倣い、深く頭を下げた。

 5秒ほどもそうしていただろうか。ゴークが顔を上げるのに合わせてサンゾーも頭を上げる。山門を見ると、和尚様が手を振ってくれていた。


「行ってまいりまーす! おしょーー!!」

「いってきまーす!!」


 サンゾーとゴークはそう叫びながら大きく手を振り、今度こそリョウゼンを後にしたのであった。




「次は第二のほこらッスね!」

「だね。西に15キロ、だっけ?」

「そうッスね! 街道沿いなので、夕方には着くと思うッス!」

「よし、気合い入れていこう! おー!」

「おー!」


 2人の旅はまだ始まったばかりだ!


 先生の次回作にご期待下さい!



 ……いやいや、大丈夫ですよ。続きます(笑)

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