近所のおっちゃん
俺の近所にな、おっちゃんが住んでいたんだ。
まあ、見た目は、どこにでもいるようなおっちゃんだよ。
40か、多く見積もっても50はいってないだろうな。
どこにでもいる、といっても、不思議なおっちゃんでな。
なんでも、魔法が使えるっていう話だったんだ。
いや、家族はいるぞ、確か息子が2人だ。
独立して、もう家にはいなかったらしいがな。
奥さんだって、もう死んだって言っていたし。
そんなことで、一人で暮らしていたおっちゃんだったんだがな。
或る時、親に怒られて家を飛び出したとき、たまたまそのおっちゃんが家の前の掃除をしていたんだ。
泣いている俺に話しかけてきてな、事情を聴いてから家に入れてくれたんだよ。
家に入ったとしても、特に何かあったっていうわけじゃないんだがな。
ただ、魔法を見せてやるよと言われて、和室で待っていたら、天井からおっちゃんが突然落ちてきたんだ。
天井に穴が開いたっていうわけじゃ無くてな、本当に落ちてきたんだ。
それから、手品みたいなものをどんどんと見せてくれたんだよ。
コインが消えたり、出て来たりな。
一番驚いたのは、水がジュースにかわったっていうことだったな。
本当に水道水を俺がいれたのに、それを知らない間にジュースに変えたんだよ。
ただ、家から迎えだっていってオカンが来たのも驚いたな。
いつの間にか親に連絡していたらしくてな、それで家に帰ったんだ。
それから?
おっちゃんは今もそこに住んでるよ。
今も変わらない格好で、変わらない姿でな。